「本気で小説書く覚悟」 直木賞ノミネートの加藤シゲアキさん

直木賞候補になった著書「オルタネート」を手にする加藤シゲアキさん =東京・矢来町の新潮社(酒巻俊介撮影)
直木賞候補になった著書「オルタネート」を手にする加藤シゲアキさん =東京・矢来町の新潮社(酒巻俊介撮影)

18日付で発表された第164回直木賞の候補にノミネートされたアイドルグループ「NEWS」の加藤シゲアキさん(33)。人と人との出会いを手助けするマッチングアプリが広まった現代を生きる高校生の青春群像を描く候補作「オルタネート」(新潮社)は先月の発売で、すでに9万部に達した。加藤さんは取材に対し「あこがれの賞でびっくりしている」と候補入りの喜びを語った。加藤さんとの主なやりとりは以下の通り。

――ノミネートのしらせを聞いたときの気持ちは

「作家にとってあこがれの賞。いつかは候補になりたいと思っていたが、今作でなれるとは思っていなかったので本当にびっくり。今までの作品も全力でやってきたので、『運がよかった』と受け止めるようにしている。すごくうれしいけれどあくまで候補なので、はしゃがないように、と」

――「びっくり」というのは具体的にどんな感じか

「信じられなくて、ピン来なかった。(自分が)コロナにかかって、なかなか仕事の目途が立たなかったり、迷惑をかけてしまったと感じたりする日々があった。少し気落ちしていたときに直木賞候補のしらせがあったので、フットボールアワーの後藤輝基さん風に言うと、『高低差ありすぎて、耳がキーンとする…』というか」

――書き続けるパワーはどこから?

「続けてこられたのはたくさんの方々の支えがあったから。書店回りをしたときに、『応援し続けたいから書き続けてください』といわれたのが印象的で、本気で小説を書く覚悟は伝えていきたいと思っていた。続けることが自分を受け入れてくれた小説界への恩返しになる」

――来年1月の受賞作発表までどんな気持ちで待つか

「今まで一読者として芥川賞と直木賞の選考をとても楽しみにしていた。作品を読んで予想したりして。まさか自分が予想される側にいくとは思っていなかったので、どきどきしている。選考委員の方々の批評眼、厳しい目も知っているつもりなので、煮るなり焼くなり…という覚悟でもあるしここまでこれただけでも十分だとも思っている。淡々と過ごしたい」

――これまでの作品との違いは

「これまでは読者を自分だと想定して書いてきたが、今作は自分ではなくてもっと広く愛されるように作品を書いてみようと思った。とにかく楽しく小説を読んでもらいたい。本を読まない若い方が多いので、読書の楽しさを伝えられたら、と意識していた」

――マッチングアプリを使う高校生たちを描いた理由は?

「始まりのきっかけは僕がやらせてもらっているバラエティー番組で、マッチングアプリの是非を討論したこと。マッチングアプリで出会い、結婚した方がいる一方でネガティブな側面を話す方もいた。議論が白熱する場面を目撃して『物語が生まれるのでは』と思った。自分は30歳を過ぎたあたりなので高校生を書くには近すぎず、遠すぎない今が一番だとも思った。青春群像劇とSNSを掛け合わせれば、物語のうねりが生み出せるのではと」

――この小説を読む人にどんな心の動きが出てくれたらいい、と思うか

「書いていて思ったのはSNSはツールの一つに過ぎない、ということ。そこを通してつながっているのはやっぱり『人』。SNSはハサミや定規と変わらないツールなんだと冷静に、ドライに向き合っていけたほうがより効果的に使えるんじゃないか、と僕は思います」