ゆうゆうLife

認知症だけど「自分らしく」 竹林プロジェクト

当事者の一人、岡本寛治さん(79)がチェーンソー用ヘルメットを脱いで言った。「汗をかいた。でも、そのぐらいがいい。夜、ぐっすり眠れる」

岡本さんは美大出の元グラフィックデザイナー。認知症があり、要介護2の認定を受けているが、「少し忘れっぽい方が、人間らしくていいでしょう」と前向きだ。「働くことは大好き。昔は小田急ハルクの仕事もしたんだよ。物づくりは優秀な方だったし、こうして働いていると元気でいられる」

他の参加者も竹を粉砕したり、チップを敷いたり、できる業務に携わった。

松本さんも、「こういうときは男手が頼りになるわ。これだけチップを敷けば、子供が転んでも大丈夫ね」とねぎらった。

それぞれが得意分野で

活動の発端は、松本さんが介護事業のかたわら始めた「認知症の人とともに歩む本人会議」。当事者が集まり、互いの体験を共有したり、不満を分かち合ったりして元気を取り戻す場だ。

だが、室内の活動にとどまらず、戸外が好きな人には外で体を動かせる場があった方がいい、と考えた。町田市に趣旨を説明し、竹林を貸してもらった。

背景には、既存の介護サービスへの疑問がある。松本さんは「若いときだってお互いさまで生きているのに、認知症と診断されたら『危ない』とか『出歩かないで』とか言われて、自分らしく過ごせなくなる。ここは決まりがないから、毎回、小さなドラマが生まれる。それがすごく大事」と訴える。

美的センスが頼り

この日、参加した認知症の当事者らは、いずれも要介護の認定を受けている。だが、みんなサービスを利用しているときとは違った生き生きとした表情を見せる。

新型コロナの流行で、どこも活動が困難になっているが、竹林の中なら「密」にはならない。今は伐採した竹をしゃれた箸にできないか検討中だ。収入が得られれば参加者に還元できる。岡本さんの美的センスが頼りだ。