さて、今週ご紹介するのは、人工知能(AI)に関するお話です。本コラムではこれまでに、欧米で先行するAI研究についてご紹介しましたが、最近、欧米などでは「将来、AIが人間の仕事を奪ってしまうのではないか」といった悲観論より、AIの新たな可能性に着目すべきだとの声が出始めているのです。
スイスに本部がある国際機関、世界経済フォーラムの公式サイト(10月26日付)や、11月30日付の香港の英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP、電子版)などによると、専門家たちは、単調な作業を繰り返す流れ作業の現場などはAIに取って代わられる一方、AIのために奪われた仕事よりもずっと多い新規雇用が、AIから生み出されると明言しました。
さらに、ビデオゲームの製作といったエンターテインメント業界や、ファッションデザイナーのような芸術的才能が求められる創造的な仕事については、人が提案する斬新なアイデアがより重視されるようになるとみているのです。
現在、インターネット産業は、米のGDP(国内総生産)の10%を占めるまでに成長しましたが、AIの分野は米国を含む世界経済全体でさらに大きな成長を遂げるとみられています。
前述した世界経済フォーラムの公式サイトは、英会計事務所大手、プライスウォーターハウスクーパース(PwC)の「年次世界CEO(最高経営責任者)調査」の今年の結果を引用。世界のCEOの63%は、AIがインターネットよりも大きな影響を世の中に与えると考えているとしています。
さらにPwCの別の調査結果として、AIの分野の急成長によって、2030年までに世界のGDPは現在より26%(15兆7000億ドル=約1600兆円)増えると推計。この数字は中国とインドの現在のGDPの合計よりも大きいといいます。