鑑賞眼

国立劇場「三人吉三巴白浪」「天衣紛上野初花-河内山-」 痛快な白鸚の河内山

【鑑賞眼】国立劇場「三人吉三巴白浪」「天衣紛上野初花-河内山-」 痛快な白鸚の河内山
【鑑賞眼】国立劇場「三人吉三巴白浪」「天衣紛上野初花-河内山-」 痛快な白鸚の河内山
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 国立劇場はコロナ禍による公演中止期間を経て、再開後の10月以降、上演形態を従来の長編通し1本から、2部制での長編2本立てへと変更した。歌舞伎座は現在、4部制(来年1月からは3部制)で、1時間から1時間半程度の作品を上演している。銀座で気軽に歌舞伎を楽しむなら歌舞伎座、腰を落ち着けて見るなら国立劇場である。

 今月は1部2部とも、河竹黙阿弥の代表作。黙阿弥の特徴は七五調の台詞(せりふ)回しの心地よさと、悪党にスポットを当てた作品群の魅力で、1部(午前11時開演)の「三人吉三巴白浪(さんにんきちさともえのしらなみ)」は盗賊が活躍する白浪物の一つ。一方の「天衣紛上野初花(くもにまごううえののはつはな)-河内山(こうちやま)-」は、いわば知能犯の御数寄屋坊主(おすきやぼうず=江戸城で将軍や、登城した大名に茶を調進した坊主頭の役人)が、大々名をだます大胆不敵な芝居だ。

 「三人吉三」は和尚吉三(中村芝翫=しかん)、お嬢吉三(中村時蔵)、お坊吉三(尾上松緑=おのえしょうろく)の三人が義兄弟の契りを結ぶ「大川端(おおかわばた)」の場面から、3人の不思議な因縁が分かる「吉祥院」、追われる3人が雪の中、大立ち回りを見せる「火の見櫓(やぐら)」までコンパクトな3幕構成。女形の時蔵が、実は男性のお嬢を演じる中で見せる「男」の部分が面白く、男女の切り替わりも鮮やか。姿も美しい。「月も朧(おぼろ)に白魚の…」の名台詞は、音楽的に偏りがちだが、言葉の内容も自然に入る。

 これまでよく和尚を演じてきた松緑は、陰のあるお坊も合うが、台詞がやや一本調子で、芝翫が加わって芝居が回り出す。和尚が断腸の思いで妹夫婦をあやめる「裏手墓地」での嘆きに、アウトローとして生きなければならない運命の因果と深い悲しみがにじみ、「火の見櫓」まで一気に見せた。坂東亀蔵の堂守源次坊がいい味。