コロナ その時

(21)「感染対策と経済回復」 菅政権、難題抱え出発 2020年9月1日~

【コロナ その時】(21)「感染対策と経済回復」 菅政権、難題抱え出発 2020年9月1日~
【コロナ その時】(21)「感染対策と経済回復」 菅政権、難題抱え出発 2020年9月1日~
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第99代首相に選出された菅義偉(すが・よしひで)首相は「最優先の課題は新型コロナウイルス対策だ」と訴えた。感染の「第2波」は収まりつつあり、観光支援事業「Go To トラベル」の継続など景気回復策を進める一方で、冬に予想されるインフルエンザとの同時流行に備える難題を抱えた。

厚生労働省に新型コロナウイルス対策を助言する専門家組織が、国内の新規感染者が緩やかに減少し始めているとの分析を公表した2日、安倍晋三首相の後継を決める自民党総裁選に菅義偉官房長官が名乗りを上げた。政治空白が懸念されたこの時期、感染拡大の鈍化を受け、経済回復策や「次の流行」に備えた動きが活発化した。

感染の「第2波」は収まりつつあるように見えるなか、政府や自治体は部分的に警戒を緩める一方、冬に向けて予想される「第3波」への備えを始めた。

厚労省は4日、秋以降の新型コロナとインフルエンザの同時流行に備え、発熱時の受診手続きの変更を発表した。政府は同日、新型コロナ対策分科会を開き、飲食業界の支援策「Go To イート」について感染抑制地域に限定して開始する方針で合意。8日には台湾など5カ国・地域を対象に長期滞在者の往来を緩和した。

東京都は10日、感染状況に関する警戒度を、約2カ月間維持してきた最高レベルの「感染が拡大していると思われる」から1段階下の「感染の再拡大に警戒が必要であると思われる」に引き下げた。23区内の酒類を提供する飲食店などに対し実施していた午後10時までの時短営業要請は、「感染拡大防止と社会経済活動の両立」(小池百合子知事)の観点から15日に終了した。

利用者減でJR終電繰り上げへ

政府は11日、プロ野球などの大規模イベントの「上限5000人」を19日から撤廃する方針を決定。赤羽一嘉国土交通大臣は観光支援事業「Go To トラベル」の対象から外れていた東京都について、10月1日から対象に加える方針を示した。

一方、JR東日本は3日、令和3年春のダイヤ改正で東京駅から100キロ圏内のほぼ全路線で30分程度終電時刻を繰り上げると発表。コロナ禍で利用者が減ったためで、JR西日本も主要線区を対象に繰り上げる方針を8月に示していた。

自民党総裁選は14日に投開票され、菅氏が岸田文雄政調会長、石破茂元幹事長との戦いに7割超の得票で圧勝した。16日に首相に選出された菅氏は就任して最初となる記者会見で、「欧米諸国のような爆発的な感染拡大は絶対阻止し、国民の皆さんの命と健康を守り抜く。その上で社会経済活動との両立を目指す」と約束した。

総裁選に注目が集まり、新型コロナの話題が報じられることが少なくなった頃、各地では不安を抱かせる傾向がみられた。国内全体の新規感染者数は9月に入っても減少傾向にあったものの、宮城や群馬、千葉では増加傾向に転じ、京都や大阪でも増加の兆しが出始めていた。感染拡大の中心地だった東京でも減少傾向は緩やかになり、やがて下げ止まった。連日のように100人以上の新規感染が確認され、10日には276人に及んだ。この頃、感染者の傾向は、感染再拡大のタイミングで目立った「若者」や「歓楽街」から、全年齢層、全域に変化していた。

大坂なおみ 全米オープンで「抗議のマスク」

それでも社会経済活動をこれ以上犠牲にすることは現実的ではなかった。小池知事は10日の会見で「コロナとの闘いは長丁場。今後も波の繰り返しを想定しなければならない」と述べ、感染者数の増加時には時短営業要請や外出自粛といった強力な施策を実施し、減少時には緩やかな対策にとどめる必要性を強調した。

海外では、テニスの全米オープン女子シングルスで優勝した大坂なおみ選手のマスク姿が話題を呼んだ。米国での人種差別に抗議するため、警官による発砲などで死亡した被害者の名前入りマスクを着用し、12日の決勝まで7枚のマスクを披露した。

(20)2020年8月17日~ 感染収まらぬ中の首相辞意

(22)2020年9月17日~ イベント規制緩和、にぎわう空・陸

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