カラオケから首相官邸まで「田園の音響研究所」発の逸品

カラオケから首相官邸まで「田園の音響研究所」発の逸品
カラオケから首相官邸まで「田園の音響研究所」発の逸品
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 圧倒的な没入感やクリアな音の広がりは「田園の中の研究所」で生まれた-。クラシカルなレコード針からワイヤレスイヤホン、首相官邸のマイクまで、幅広い音響機器を手掛けるメーカーが北陸の地にある。福井県越前市の「オーディオテクニカフクイ」。音響機器メーカー「オーディオテクニカ」(東京)の生産子会社で、機器の設計、開発とともに一部の高級品の製造を担う。誕生から今年で50年、音楽の今昔を手がけてきた会社だ。

ホールも完備

 目の前に田んぼが広がる光景。オーディオテクニカフクイが平成22年に開発拠点として設備を充実させて完成させた新社屋は、その立地から「田園の中の研究所」と称している。

 「研究所」が有する機能の一つが「無響室」。壁や天井、床下までに吸音材を張りめぐらせ、音の反射をほとんどなくした部屋だ。機器が発する本来の音を知ることができ、音響機器の重要な性能となる音質を分析する。

 「電波暗室」は室内が電波吸収体で囲まれており、携帯電話、テレビ、ラジオ、無線など外部に飛び交う電波を遮断して影響をなくし、機器自体が発する電波を計測する。部屋の広さは縦20・5メートル、横12・3メートル、高さ9メートルで全国屈指の規模だ。この部屋がいかに重要か。「国ごとに電波の規制は違い、機器がそれらを守られているか調べる」と同社の担当者。規制から外れる電波はさまざまな機器に入る電子回路に電流を走らせ、誤作動させる危険があるのだ。

 このほか、マイクやスピーカーの音響評価を行うための、コンサートができる80人収容の音響ホールも敷地内に備えている。

レコード針16万円

 同社は昭和45年、オーディオテクニカの福井事業所として始まった。当時はレコード全盛の時代。主力製品はレコードプレーヤーの「カートリッジ」、いわゆるレコード針で、製造数のピークは55年前後で月産100万個に達した。

 レコードの衰退で平成21年にはピーク時の50分の1となる月産2万個に落ち込んだ。だが、近年は需要が回復。同社総務課主幹の市橋政信さんは「レコードが世界的に再注目され、月15万個まで盛り返した」と話す。技術を絶やさずに作り続けたことは、OEM(相手先ブランドによる生産)にもつながっている。

 同社で生産しているのはMC(ムービング・コイル)型というレコード針。精密にコイルを巻きつける技術のほか、音を聞きながら感性で作り上げる熟練と経験による製品のため高額になり、1個2万円を下らないばかりか、最高16万5千円の商品もある。