主張

GoTo全国停止 28日まで待つ必要あるか

 印象は遅きに失し、中途半端である。これで感染拡大と戦えるのか、不安である。

 政府が新型コロナウイルスの感染対策で、観光支援事業「Go To トラベル」について、28日から1月11日までの年末年始は全国一律に一時停止すると決めた。

 27日までは札幌、大阪両市の停止を延長するとともに、東京都、名古屋市を目的地とする旅行も対象から除外する。

 菅義偉首相は「皆さんが落ち着いた年明けを迎えることができるように、最大限の対策を講じる」と述べた。それならなぜ全国停止を28日まで待つのか。

 西村康稔経済再生担当相は11月25日、感染拡大が進むコロナ対策について「勝負の3週間」と位置付けた。翌26日には菅首相も「この3週間が極めて重要な時期だ」と述べていた。「勝負」と銘打つなら、この時点で大きな施策を講じるべきだった。

 その間、今月12日には国内での新型コロナの新規感染者が過去最多の3千人超を記録し、北海道旭川市や大阪府の一部などで医療提供体制が逼迫(ひっぱく)して自衛隊から看護官らの派遣を受けた。NTTドコモがまとめた12日の全国の主要駅や繁華街の人出は全95地点のうち64地点で前週の土曜を上回った。政府の「勝負」の掛け声は、国民に響かなかった。

 11日、菅首相はインターネット番組に出演し、「いつのまにかGo Toが悪いことになってしまった」「移動では感染はしないという提言もかつていただいていた」と述べた。それなら従来の渡航制限や外出自粛要請はむだだったことになる。

 トラベル事業とは、国による移動の推奨である。それ自体が悪いのではない。不要不急の外出自粛要請とは明らかに正反対を向き、政府の姿勢を分かりにくくしている。だから批判の対象となっていたことに理解が足りない。

 トラベル事業が地方経済の下支えに有効であることは結果が示した。この成功体験に自信を持ち、感染が収束傾向に転じるのを待って堂々と再開すればいい。

 新型コロナ感染症対策分科会の尾身茂会長は政府に「現状の認識をしっかりして、合理的な決断を迅速にしてほしい」と注文をつけていた。認識の欠如、決断の遅滞を前提とした提言だ。さらなる対策強化を求めたい。

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