【モスクワ=小野田雄一】ロシアの反体制派指導者、ナワリヌイ氏=ドイツで治療中=の毒殺未遂事件で、英調査報道サイト「べリングキャット」は14日、事件は露連邦保安局(FSB)の暗殺チームが実行したとする調査結果をウェブサイトで公表した。調査にはナワリヌイ氏の支援団体や露独立系報道機関なども参加。容疑者として特定した8人の男の顔写真や氏名なども公開した。
べリングキャットは2017年以降に30回以上、ナワリヌイ氏の出張に不自然に同行しているグループがいたことを突き止めた。そこから独自にグループの電話発信記録などを入手。その結果、FSB内に化学兵器の専門家ら15人程度でつくるチームが組織されていることが判明したという。
今年8月20日の事件発生時も、暗殺チーム3人がナワリヌイ氏の出張先に先回りしていた。事件前後に暗殺チームはFSB本部などと連絡を取っていたほか、毒物の痕跡を消す技術を持つ露研究機関に連絡していたことも分かったという。
ナワリヌイ氏は12月14日、自身のサイトで「これほど大掛かりな計画はプーチン大統領の承認なしではありえない」と述べた。
べリングキャットは英南部ソールズベリーで18年に起きた露軍参謀本部情報総局(GRU)のスクリパリ元大佐襲撃事件で、英捜査当局が逮捕状を取ったロシア人容疑者2人を特定したことで知られる。
露政権の腐敗を追及してきたナワリヌイ氏は今年8月、出張先の西シベリア・オムスクからモスクワに戻る旅客機内で倒れ、露病院を経て独病院に移送。露病院は「毒物の痕跡はない」としたが、欧米側の複数の研究機関は、同氏が旧ソ連開発の軍用神経剤「ノビチョク」系の毒物で襲撃されたとの分析結果を公表した。露政権は関与を否定する一方、捜査には消極的な姿勢を取っている。