「いつまで待てば」拉致被害者家族会代表・飯塚繁雄さんインタビュー 募る虚無感、政府奮起期待

10月に実施された、横田めぐみさんの父・滋さんのお別れ会で挨拶をする家族会代表の飯塚繁雄さん。産経新聞の電話インタビューに応じた
10月に実施された、横田めぐみさんの父・滋さんのお別れ会で挨拶をする家族会代表の飯塚繁雄さん。産経新聞の電話インタビューに応じた

 北朝鮮による拉致被害者、田口八重子さん(65)=拉致当時(22)=の兄で家族会代表の飯塚繁雄さん(82)が、産経新聞の電話取材に応じた。家族の死去や依然、停滞する日朝交渉など今年1年の動静を振り返り、「期待や希望を持つことがなくなってきた」と厳しい思いを吐露。体調不良から集会や講演への出席も見送らざるを得ない状況が続き、虚無感も募るなか、一刻も早い被害者の帰国実現へ改めて菅義偉(すが・よしひで)政権の奮起を求める。(橘川玲奈)

「分かっていた」訃報

 「感傷的な気持ちにはなれない。政府の動きが見えない中、こういう事態が来ることは分かっていた」

 今年に入り拉致被害者家族の訃報が相次いだことについて、飯塚さんはこう振り返った。

 飯塚さんが「拉致問題の象徴」と評する横田めぐみさん(56)=同(13)=の父、滋さんが6月、87歳で亡くなったのをはじめ、2月には有本恵子さん(60)=同(23)=の母、嘉代子さんが94歳で死去した。

 拉致問題の解決を訴え続けた2人。それでも、40年以上の時間が経過しながら、現状に目立った進展は見られない。「(再会がかなわないまま家族が死去するのは)当たり前の現象だ」。そんな思いにとらわれるという。

 82歳。最近は「自宅と病院を行ったり来たり」の日々を過ごす。夏場には一時、入院もした。今月12日に実施された国際シンポジウムも含め、関連する行事に参加できないことが多くなっている。家族会代表としてじくじたる思いもあるが、「身体が苦しく、外に長い時間は出ていられない」と漏らす。

 飯塚さんが家族会の代表となったのは平成19年11月。会が結成された9年から10年間にわたり代表を務めた滋さんから、バトンを託された。

 当初は3年間の約束だったが、拉致問題に特段の動きはなく、「今、自分の代わりはいない」との思いから、先頭に立ち続けた。滋さんの意志をつなぎ、国内外で拉致問題の理解促進や解決を訴え、気づけば13年が経過した。

日本が主導権を

 今年は被害者家族の死去に加え、拉致問題を「最重要課題」に掲げてきた安倍晋三首相が退任し、菅政権が9月に誕生。11月の米大統領選では、拉致問題への協力姿勢を鮮明にしていたトランプ大統領に代わり、バイデン氏が次期大統領に就任する見通しとなるなど、周辺の政治状況が大きく変わった。

 加えて、新型コロナの感染拡大は、拉致被害者の救出運動に打撃を与えた。各地での集会などは縮小を余儀なくされ、同様に外交交渉など政府の動きも停滞。菅首相は安倍前首相の考えを継承しているが、具体的な方策や成果は依然、見えてこない。

 飯塚さんは、被害者の奪還に向けて、「イニシアチブを取るのは日本政府であり、総理大臣」と言い切る。そして、「米国など外国をあてにするのではなく、日本がどれだけやるかが重要だ」と強調し、早急な行動を求める。

 昭和53年に八重子さんが拉致されてから42年が過ぎ、また1年が終わろうとしている。「八重子を含め、被害者には『悪いけど、待っていてくれ』と言いたい。問題は、いつまで待てばいいのか、だ」。飯塚さんは、最後に語気を強めた。