全盲の人類学者がコロナ禍真っただ中の今年5~7月にウェブ連載し、話題を集めたコラムに大幅加筆した。副題は「世界の感触を取り戻すために」。触ることの意味を改めて問う触文化論だ。
ライフワークである琵琶法師の研究からユニバーサル・ミュージアム(誰もが楽しめる博物館)の実践まで。国内外での体験を紹介しつつ「可視」を重視する近代化の中で人類が失ってきた触の重要性を指摘。濃厚接触の意義とマナーを喚起するあたりは哲学的でもある。写真を多く使った紙上「触博」も。点字印刷の技法による触図を使った表紙カバーが楽しい。(小さ子社・1500円+税)