鑑賞眼

歌舞伎座「十二月大歌舞伎」 愛之助は名バレエダンサー?

「弥生の花浅草祭」で三社祭の場を踊る(左から)片岡愛之助、尾上松也(C)松竹株式会社
「弥生の花浅草祭」で三社祭の場を踊る(左から)片岡愛之助、尾上松也(C)松竹株式会社

 東京・歌舞伎座で上演中の「十二月大歌舞伎」第1部は、4つの場面から構成された変化(へんげ)舞踊「弥生の花浅草祭」。片岡愛之助と尾上松也が、まったく違う四役を器用に踊り分けるというのが見どころ。舞台も衣装も次々と変わるので、とにかく見ていてワクワクするし、音楽も常磐津から清元、長唄と変化するので聞いても楽しい演目だ。

 私が歌舞伎座を訪れたのは12月2日。愛之助は上方舞の流派の一つ、楳茂都流(うめもとりゅう)の四世家元ということで、ついつい愛之助の踊りに目が行ってしまう。とくに2つ目の場面「三社祭」の踊りは、日本舞踊にしては珍しく跳躍したり、脚を高く上げたり、といったクラシックバレエのような動きがあるので、自称クラシックバレエ経験者(あくまで習い事)の目線で舞台をついつい見てしまった。

 日本舞踊とクラシックバレエは、基本的に真逆の動きをする。日本舞踊は腰を入れる、つまり重心が下だが、バレエは上体を引き上げる、つまり重心は上。基本はまったく違うが、重要な共通点を見つけたのだ。

 「そうだ、軸だ!」。身体の軸がしっかりしていないと踊りがちっとも美しく見えないのは、日本舞踊もクラシックバレエも同じ。あるプロのバレエダンサーは、この軸を「お団子(自分)の真ん中に刺してある串のようなもの」と表現していた。

 とくにクラシックバレエの場合、軸がないとピルエット(回転)は回れない。ピルエットはまさに軸をまっすぐ立ててコマを回す感覚で回らないと、2回転、3回転はまず無理だ。

 愛之助は軸もしっかりしていて、バレエ用語で「プリエ」と呼ばれる動きでも、両脚の膝をしっかり曲げていた。しかも男踊りということもあるせいか、アン・ドゥオール(外股)にもなっていた。脚を上げる場面でも膝をまっすぐに伸ばし、まるでバレエのバットマン(軸脚からもう一方の脚を離したり戻したりする動き)を見るようだった。

 いちばん驚いたのは、愛之助が決めポーズをとったときに、足の親指が切れ上がっていたことだ。つまりつま先まで神経が行き届いているということ。日本舞踊では、足の親指の付け根に体重をかけるのが基本だからそんな所作になったのかもしれない。

 バレエも、つま先まで細心の注意を払うのは一緒。愛之助の踊りを見ていたら、踊りの基本は洋の東西を問わない、とつくづく感じ入ってしまった。

 12月1~26日(8日、18日休演)、東京都中央区の歌舞伎座。チケットホン松竹0570・000・489。(水沼啓子)

 公演評「鑑賞眼」は毎週木曜日正午にアップします。