■高校総体V「才能あると思っていた」
瀬島の優れた資質は、そのキャリアと無関係ではない。
京都府出身。3人兄弟の三男。元日本陸軍参謀で伊藤忠商事会長だった瀬島龍三と同姓同名だ。親が瀬島龍三を主人公のモデルとした山崎豊子の小説『不毛地帯』のファンで、そういう大物になるようにと名付けられたという。
7歳から体操を始め、名門の京都・洛南高では3年時に全国高校総体の個人総合を制覇した。大学は日体大に進学。入学時、4年生には、あの内村航平と山室光史がいた。瀬島は1年生ながら彼らに交じって全日本団体選手権のメンバーに抜擢(ばってき)されて優勝するなど、世代のトップ選手として活躍を続けた。
「自分で才能あるんだなと思っていました。航平さんにも買ってもらっていましたね」
忘れられない思い出がある。内村が大学を卒業し、寮を出ていくとき、わざわざ瀬島の部屋を訪ねてきたのだ。
「やるよ」
手渡されたのは内村のジャージー。日本体操協会の強化指定「ナショナル選手」だけがもらえるジャージーだった。「うれしかったですね」。俺の後を継げ-。そんなメッセージを強く感じた。
瀬島は期待に応え、翌シーズンにナショナル選手となり、ユニバーシアードに出場。大学3年は腰のヘルニアで振るわなかったが、4年で再びナショナル入り。さらに右肩上がりで成長していくことを疑っていなかった。