医療崩壊寸前、過酷な現場 近大病院「心身とも限界」

医療崩壊寸前、過酷な現場 近大病院「心身とも限界」
医療崩壊寸前、過酷な現場 近大病院「心身とも限界」
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 新型コロナウイルスの感染急拡大に伴い医療体制が逼迫(ひっぱく)し、医師や看護師らは過酷な対応を強いられている。大阪府内では8日、確保している重症病床(206床)の使用率が70・9%に達し、自粛要請の基準「大阪モデル」で非常事態(赤信号)を示す基準の70%を超えた。最前線の現場は、感染防止のための意識と行動を心掛けるよう求めている。

 「ベッドは満床に近いギリギリの状態だ。助かる命が助からない『医療崩壊』の瀬戸際まで来ている」

 新型コロナの重症者を受け入れる近畿大学病院(大阪府大阪狭山市)の東田有智(とうだ・ゆうぢ)病院長(67)は危機感をあらわにした。

 同病院は大阪府南東部の基幹病院(929床)で、8日までは10床を重症者用に運用し、府の増床要請を受け9日から12床に増やした。11月中旬以降は病床が空いてもすぐに埋まる「自転車操業」の状態が続く。

 一般病床では患者7人に看護師1人で対応するが、コロナ病床では重症者1人に複数の看護師を配置。現在は重症者に呼吸器内科の医師3人と看護師約30人であたり「マンパワーとしては、きつい」。

 重症病床特有の人工呼吸器の管理は専門性が高く、増員は簡単ではない。「患者への負担を考慮し、症状の変化に応じて酸素濃度を微妙に調節する必要があり、夜間も機器の不調がないかチェックしている」と東田病院長。

 床ずれ防止のため患者の体勢を定期的に変えたり、たんを詰まらせないように吸引したりもする。防護服を着用して動けば、2時間後には汗だくの状態だ。

 家族や第三者の感染リスクを考え、当直日でなくても帰宅せず院内施設で宿泊する職員も少なくないという。東田病院長は訴える。

 「行動を制限され緊張を強いられる中で、精神的にも肉体的にも限界が近づいている。目の前の患者を治療するために使命感だけで続けてくれている」

 近大病院は、地元で唯一の3次救急医療機関でもあり、重症者を受け入れる一方、通常の救命救急対応も続けている。冬場は心筋梗塞や脳梗塞の急患が多く、一般病床も余裕はない。

 懸念しているのは、院内感染の発生だ。仮に重症病床が満床になり、基礎疾患を持つ一般病床の患者に感染すれば、クラスター(感染者集団)が発生し、医療機能の一部を止めざるを得ない事態も想定される。

 東田病院長は「機能の停止は、すなわち医療崩壊であり、絶対に避けなければならない」と強調する。

 府内では8日、実際の運用病床数(176床)に占める重症者の割合(運用率)が83・0%に上った。重症者は感染ピーク時より一定期間遅れて増えるとされ、予断を許さない状況が続く。東田病院長はこう訴えた。

 「コロナ以外の患者を受け入れられなくなる事態は避けたい。増床には限界があり、全体の感染者を抑制する必要がある。府民一人一人が感染を広げないよう自覚した行動を取ってほしい」