岸信夫防衛相は9日の自民党国防部会・安全保障調査会の合同会議で、政府が配備を断念した地上配備型弾道ミサイル迎撃システム「イージス・アショア(地上イージス)」の代替策として、イージス艦2隻を導入する案を示した。合わせて、陸上自衛隊の12式地対艦誘導弾を長射程化し、敵の射程圏外から攻撃できる「スタンド・オフ・ミサイル」として開発する案も示し、了承を得た。
防衛省は地上イージス代替策としてのイージス艦について「イージス・システム搭載艦」と説明した。弾道ミサイル防衛を基本的な任務とする。
その一方、南西方面で中国の軍事的脅威が増大している現状をふまえ、巡航ミサイルや戦闘機などに対処可能な新型対空ミサイル「SM6」をイージス艦に搭載する方針だ。
12式地対艦誘導弾の長射程化については、5年の開発期間で国産化し、地上だけでなく、艦艇や航空機からも発射できるよう改良する。そのために、令和3年度予算の概算要求で27億円だった開発費を335億円に増額する。
長射程化で艦船や航空機から発射できるようになれば、能力上は敵基地を攻撃することも可能となる。安倍晋三前首相は政権末期に敵基地攻撃能力を含む「ミサイル阻止」のあるべき方策を年内に示すよう談話も出している。しかし、加藤勝信官房長官は今月9日の記者会見で、今回の長射程化について「敵基地攻撃を目的としたものではない」と強調した。