自衛隊と中国軍の偶発的な衝突を回避するための「海空連絡メカニズム」をめぐり、11月24日の日中外相会談で議題となった防衛当局間のホットラインの年内開設は困難な見通しとなっている。中国の王毅(おう・き)国務委員兼外相が会談後の共同記者発表で年内に開設する方向で合意したと言及したものの、回線工事などを含め必要な手続きを年内に終えるめどは立っておらず、ホットラインの開設は越年しそうだ。
岸信夫防衛相は外相会談後の27日の記者会見で、ホットラインの開設について「王氏から前向きな発言があったと理解している。防衛当局間で早期開設に向けて調整を加速していきたい」と述べた。
海空連絡メカニズムは平成30年6月から運用が始まっており、艦船や航空機による現場レベルでの直接交信に加え、運用状況を協議する当局間の定期会合の開催などを柱としている。その中で積み残しとなっていたのが、緊急時に相互に意図を確認するためのホットラインの開設で、日中両外相は早期開設を目指すことでは一致した。
ただ、王氏が開設時期を「年内」と区切ったことについては、外務省関係者は「王氏の気持ちの表れ」と説明しており、現実的には難しいことをにじませている。ホットラインをどのレベルで開設するかについても防衛当局間で調整が済んでおらず、防衛省幹部は「なぜ『年内』と言ったのか」と首をかしげる。
王氏は共同記者発表で今回の来日の成果を強調する一方、尖閣諸島(沖縄県石垣市)をめぐっては中国側の領海侵入を正当化するなど、強硬姿勢も鮮明にした。日本政府関係者は「ちゃんと仕事をしているという北京向けのメッセージだろう」と王氏の意図を分析している。