アディダスはデータとロボットをフル活用し、まったく新しい構造のシューズを生み出した

PHOTOGRAPH BY ADIDAS
PHOTOGRAPH BY ADIDAS

 アディダスがアスリートから取得したデータとロボットを組み合わせることで、まったく新しい構造のシューズを開発した。新技術「STRUNG」では、ロボットが何千本もの糸をシューズのアッパー全体に配置することで、縦横無尽に糸が走った軽量なシューズをつくりだす。ソフトウェアによって多様な用途に最適化できる新技術は、量産面でもさまざまな利点があるという。

TEXT BY MATT BURGESS

TRANSLATION BY YUMI MURAMATSU

WIRED(UK)

この3年というもの、ランニング界はある技術に取りつかれていた。その技術とは、カーボンファイバープレートである。

ランナーを前へと押し出すことを助けるバネのようなプレートは、いまやほぼすべてのランニングシューズメーカーの最高級シューズに採用されている。ところが、スポーツ用品メーカーがカーボンファイバープレートで競っている間、シューズのアッパーに使われる生地の素材は無視されてきたのだ。

それも、これまでの話である。このほどアディダスは、コンピューターやスポーツを専門とする同社のサイエンティストたちが、シューズのまったく新しいアッパーの開発に4年かけて秘密裏に取り組んできたことを明らかにした。「FUTURECRAFT.STRUNG.」と呼ばれるこのシューズでは、ロボットがシューズの生地に1%2C000本を超える糸を1本1本、驚くような角度で素早く配置している。

ランナーの動きを高解像度スキャン

この生地をつくるために、アディダスは特別なロボットとソフトウェアを開発し、ランナーが走っているときに足がどのように動くのかを高解像度でスキャンした。この技術を実証するために同社は、新しい生地のアッパーに3Dプリントによるソールを組み合わせることで、プロトタイプのシューズ(上の写真)をつくり上げた。その結果、これまでのアディダスでも最大級に先進的なシューズが誕生したのだ。

STRUNGの生地は、まずはランニングシューズ用としてつくられており、発売は2021年後半か22年になる見込みだ。しかしアディダスは、すでにこの新たなプロセスを別の製品で使う方法を検討している。

「これまで生地の製造方法は、基本的に織るか編むかの2種類でした」と、STRUNGの開発拠点となった「FUTURE LAB」でイノベイションデザイナーを務めるフィオン・コーコラン=タッドは語る。この研究所では最近、100パーセントリサイクル可能なシューズ「FUTURECRAFT.LOOP」や、3Dプリントによるシューズも開発されている。同じくイノベイションデザイナーのアンドレア・ニエトは、「糸をあらゆる方向に配置できるので、ダイナミックな生地をつくることができます」と付け加える。

会員限定記事会員サービス詳細