日本独自の上映方式「カツベン」と新しい無声映画の可能性

日本独自の上映方式「カツベン」と新しい無声映画の可能性
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 さかのぼること1世紀以上、まだ映画に音がなかった時代、主人公になりきって独自のせりふや解説を添える職業が世の人を熱狂させた。活動写真弁士、略してカツベン-。神戸で国内初の映画が公開された1896(明治29)年以降、最盛期には7千人超が活動、なかには役者顔負けの売れっ子もいた。現代におけるカツベンは10人に満たないが、近年は海外からの公演依頼に始まり、若手女優らが新たな無声映画の製作に乗り出すなど、再び脚光を浴びつつある。(中井芳野)

しゃべりの独壇場

 11月中旬、神戸市中央区のミニシアター「元町映画館」。スクリーンには事件の解明に奮闘する若き探偵の姿が映し出されていた。

 「ははーん、そういうことか!」

 活動弁士の大森くみこさんが探偵になりきり、声を張り上げる。その瞬間、絶妙なタイミングでピアノの伴奏が加速していく。探偵がその場にいるような臨場感。観客はその先の展開に息をのんだ。

 上映されていたのは世界三大喜劇王のバスター・キートンが監督・主演を務めたサイレントコメディー「キートンの探偵学入門」(1924年)。大森さんは白黒の映像に出てくる愉快な登場人物のせりふに合わせて次々と声色を変える。それだけでなく、客観的な立場からの出演者へのツッコミ、さらに公開当時の時代背景に関する独自の解説も加えていく。40分にわたる「1人しゃべり」に、観客は映画の世界に引き込まれた。

 宇宙船が月に到着するシーンで有名な「月世界旅行」(1902年)に、一獲千金の夢を抱く青年にチャールズ・チャプリンがふんする「黄金狂時代」(1925年)。もともとタレントだった大森さんが活動弁士の道に進んだのは約10年前、偶然見たこれらの無声映画と弁士の存在に魅了されたからだ。弁士の個性によって作品も十人十色となる。