朝晴れエッセー

卒論の絵本のごとく・12月6日

2歳になったひ孫が、3頭入居の子牛の柵の中ではしゃいでいる。自分より頭ひとつ大きな子牛を追いまわしている。

あぶないと思いながらも、その光景がうれしくて50年近い昔のことを思い出した。

地元の女子大3年の秋、夫との婚約が決まった。4年になってすぐに学生結婚で酪農家に嫁いだ。

児童学科に在籍していたが、あえて教職はとらなかった。夫とともに酪農家であるために。卒論に絵本制作を選んだ。「えっちゃん」という女の子と子牛の「ぶんぶ」の物語。

息子も娘も孫たちも、そしてひ孫までも「えっちゃん」同様、牛たちと仲良くなって、私は内心ひとりで絵本に感謝している。残念ながら家のリフォームなどで紛失してしまったけれど、絵本は私にかけられた魔法みたいなものだった。

酪農でがんばれ、代を紡いで地域の核となれ、親の願いでもあったけれど、いつの間にか自分の信念ともなっていた。

絵本の家族構成はパパ、ママ、えっちゃんの3人だったけど、現在のわが家は8人家族、3組の夫婦と孫娘とひ孫の女児。絵本が何冊も重なっているようなにぎやかさである。

乳牛頭数も経営も大きくなって、地域の核となりつつあることに誇りを感じる日々ではあるが、どうかこれから後も、代を紡いで何人ものえっちゃんが生まれますようにと願っている。

松崎まり子(70)酪農業 岡山市東区