高級石材やオリーブ配合のガラス工芸が醸す瀬戸内らしさ

高級石材やオリーブ配合のガラス工芸が醸す瀬戸内らしさ
高級石材やオリーブ配合のガラス工芸が醸す瀬戸内らしさ
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 瀬戸内海のような澄んだ青色と、オリーブの樹木を思わせる淡い緑色。それぞれ、「花崗岩(かこうがん)のダイヤモンド」と呼ばれる高級石材「庵治(あじ)石」と、オリーブの枝や葉で着色したガラスだ。「ガラスを通して香川の魅力を伝えたい」と話す高松市のガラス作家、杉山利恵さん(47)の工房には、そうした香川県の特産品を溶かし込んで作った食器やオブジェの数々が並んでいる。

自然が生み出す色

 杉山さんの工房「Rie Glass Garden」(同市)の1階は制作のための作業場。2階ではガラス作品を販売する。花瓶やグラス、酒器、山をかたどったペーパーウエートや丸みを帯びた鳥の置物…。どれも手仕事の温かさがあるが、よく見ると、わずかな大きさの違いに気付く。杉山さんは「誤差が少しずつある物が並ぶと、息遣いのように感じる。感情に訴えかける揺らぎが手仕事の強みです」と話す。

 青色は庵治石を加工する際に出る粉を、緑色はオリーブの枝や葉を燃やした灰や炭を用いる。どちらも自然が生み出した色。ただ、「庵治石は色がきっちり出るのに比べ、オリーブは、いつも同じ色とはいかない」(杉山さん)。

「プロの作家に」

 幼い頃からガラス好きでビー玉や瓶を収集していた杉山さん。働くようになると、器やワイングラスに手を伸ばした。

 20代の頃、ガラス工房を見学。吹き竿(ざお)にドロドロに溶けたガラスを巻き付け、空気を吹き込んで膨らませる姿に「プロになりたい」とあこがれを抱いたが、生計を立てられるのは一握りと聞き、数年間、趣味としてガラス作りを習った。

 プロのガラス作家の夢を諦めきれなかった頃、転機が訪れた。退職後に物作りに打ち込む生活を楽しみにしていた母親が他界。杉山さんは自らの生き方を見つめ直し「一度きりの人生。ガラスの仕事以外は考えられない」と心を決めた。

 学費をためて東京で基礎を身に付けた後、富山のガラス研究所に入学。制作技法を学んだ。

にじみ出る個性

 作品には作り手の個性が表れるという。仲間によく言われたのは「曲線が多い」「ゆったりした物を作るね」という言葉。杉山さんは「りんとした物を作ろうとしても、柔らかさが出る」と語る。香川の気候や風土、農産物で育まれた個性が作品ににじみ出て、見る人にとっては香川らしさと映るのかもしれない。