新型コロナウイルスの感染急拡大を受け、自粛要請の基準「大阪モデル」の赤信号を点灯させた大阪で逼迫(ひっぱく)しているのは、重症病床だけではない。全国初の中等症専門病院である大阪市立十三市民病院(淀川区)では退職者が相次ぐ一方、重症化リスクが高い高齢者らを受け入れ、「綱渡り」の状態が続く。現場は中等症病床の拡充に加え、重症病床との一体運用の必要性を訴えている。
大阪府が約70の医療機関との間で確保した軽症・中等症病床は1226床。十三市民病院は、うち90床を備える中核施設だ。3日の府内の軽症・中等症病床使用率は53・7%、実際の運用病床数に占める軽症・中等症患者の割合は63・6%に上り、予断を許さない。
十三市民病院は松井一郎市長の肝煎りで、5月から中等症専門病院としての運用を開始。もともとコロナ患者約20人を受け入れていた結核病棟に加え、一般病棟も改修し、6月下旬までに90床を確保した。
現在、同院へ搬送されるコロナ患者の大半は重症化しやすい高齢者で、入院患者では70代以上が7割を占める。食事や排泄(はいせつ)など介助が必要な患者も少なくない。
入院中のコロナ患者(1日平均)は5月に11・5人だったが、感染第2波の8月に42・3人と約3・7倍に急増。第3波の11月には45・5人まで増えた。確保した90床のうち、現時点で実際に運用できるのは「60床が限界」(西口幸雄院長)という厳しい状況だ。