鑑賞眼

「プロデューサーズ」華麗なる全力コメディ

マックス(中央右、井上芳雄)とレオ(中央左、吉沢亮)による企みの結末は…(東宝演劇部提供)
マックス(中央右、井上芳雄)とレオ(中央左、吉沢亮)による企みの結末は…(東宝演劇部提供)

 1959年、ブロードウェー。落ちぶれて破産寸前のプロデューサー、マックス(井上芳雄)を訪れた会計士のレオ(吉沢亮)は、舞台が成功するより失敗したほうが利益を生むと気づく。マックスはレオを共犯にして「史上最低のミュージカル」を作り上げ、金を持ち逃げする詐欺を計画するが…。

 原作は1968年の同名映画。映画を監督したメル・ブルックスにより、2001年にブロードウェーでミュージカル化された。業界裏事情や名作のオマージュ、性的少数者や移民などの社会問題を笑い飛ばして大ヒット。トニー賞12部門を受賞した。

 日本版の演出は福田雄一。今作はいつもの逸脱が控えめだが、独自のネタを忍ばせて、観客を喜ばせるのはコメディーの奇才ならでは。華やかなオリジナル版の雰囲気のまま、キャストの個性を生かした明るい舞台となった。

 井上は、衣装の生澤美子が狙った通り「昔は色男、今は…」といった、うさん臭いプロデューサーに変身。全力で3枚目色男を演じ客席を沸かせた。ヒトラーオタクの最悪脚本家フランツ(佐藤二朗)に計3回も理不尽にビンタされるなど、体を張っている。

 ミュージカル初挑戦の吉沢は堂々とした歌いっぷりとキレのあるダンスを披露。絵に描いたような電波系ブロンド美女、ウーラ演じる木下晴香、独特の美意識を持つ最悪演出家ロジャー(吉野圭吾)の助手で、恋人のカルメンを演じる木村達成は、いずれも身のこなしが抜群に美しい。

 一方で全体を通して、性的少数者、障害者、ユダヤ、移民、ブロンド美女などに対するステレオタイプな笑いには一抹の危うさも感じる。古典的名作における、時代の価値観に合わせたブラッシュアップの難しさを感じた。

 レオは大野拓朗とのダブルキャスト。6日まで。東京都渋谷区の東急シアターオーブ。問い合わせは東宝テレザーブ、03・3201・7777。

 公演評「鑑賞眼」は毎週木曜日正午にアップします。