市民守る 防火衣に感じた命の重み 消防隊員の訓練 記者が体験

1分で完全装備

 続いて、隊員が着用している防火衣に袖を通した。厚手の耐熱素材で作られ、重さはブーツなど含めて計約10キロ。これに酸素ボンベを背負うと、約20キロにも及ぶ。これが最も基本的な装備だが、身動きが取りにくく、立っているだけで息苦しい。ジワジワと体力が消耗していくのを感じた。

 この格好で隊員は火災現場に突入したり、高層階まで駆け上ったりして、人命救助に奔走しているのだ。記者が装着に15分以上費やしたのに対し、隊員は119番通報を受けてから1分で着て出発するという。指導してくれた隊員は「いかに迅速かつ安全に活動できる環境を整えるかが重要で、そのために各隊員は工夫している」と力を込める。

命を張った救助

 火災現場に到着した隊員にとっての重要任務は消火だけではない。煙が充満した建物内で取り残された人を捜索する「人命検索」も必須の使命となる。

 過酷な状況下でも命を救う活動ができるよう、消防学校には特別な装置で炎や煙を発生させる訓練場がある。炎が赤々と燃える訓練場内は数百度に達し、防火衣を着た状態で火元が数メートル先にもかかわらず、反射的に逃げてしまうような迫力と熱さを感じた。

 放水訓練も体験した。ポンプ車から伸びるホースの先端部の筒先を両手でしっかりと持ち、本番同様の高い水圧に耐えながら炎をめがけて放水した。水圧が想像以上に強く、後ろに引っ張られるような格好になる。「前傾姿勢で、筒先は絶対に離さないで」。隊員からの助言を受け、何とか持ちこたえた。

 燃え盛る炎に立ち向かう隊員にとって、水は「命綱」だ。危険と隣り合わせの現場では、1分1秒を争う。助けを待つ人と、自ら命を張って救助に向かう隊員。ホースを持った際に感じた、ずっしりとした重みは、1人1人の命を守る隊員たちの任務の重さに触れたようにも感じた。

会員限定記事会員サービス詳細