「昆虫並ぶ食卓を」奈良の大学生昆チューバー奮闘

「昆虫並ぶ食卓を」奈良の大学生昆チューバー奮闘
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 食糧危機の解決策として注目される「昆虫食」を広めようと活動する大学生がいる。奈良県斑鳩町の近畿大学農学部3年、清水和輝さん(21)。熱烈な昆虫食好きで、「ゲテモノという印象を変えたい」と動画投稿サイト「ユーチューブ」で昆虫を使った料理の紹介や魅力を発信している。6月にはコオロギの粉末を混ぜた「コオロギコーヒー」の開発のため、クラウドファンディングで資金を募り、2カ月足らずで達成した。昆虫が並ぶ食卓の実現を目指し、奮闘している。(前原彩希)

 ■きっかけはイナゴのつくだに

 「こんにちは、『昆Tuber』のかずきです。今からセミを使ったマーボーを作ります」

 6月末に配信した動画では、アブラゼミ2匹を使って、「野菜たっぷり・セミ薫るマーボー」と題した料理を披露。協力したのは、奈良市のレストラン「トキジク キッチン平城京」の川辺瞬料理長で、野菜や肉とともにアブラゼミを手際よく炒める様子を清水さんが実況した。

 清水さんが昆虫食の魅力に気づいたのは高校生のとき。生物の教諭が用意したイナゴのつくだにを食べ「予想以上においしい」と感動したのがきっかけだ。

 それから昆虫食の可能性に目覚め、自身でも昆虫を使った料理に挑戦。セミやバッタ、トンボなどを捕まえ、素揚げにして食べてみた。学校で友人にふるまい、「ポップコーンみたいにさくさくしている」(清水さん)と好評だったのはゴミムシダマシ科の幼虫「ミルワーム」。自身が最もおいしかったのはトンボで、「筋肉のついた胸の部分がジューシーで、エビと鶏肉のような味がする」と話す。

 ■昆虫食セミナー「運営したい」

 活動を本格化したのは昨年10月に奈良県が主催した「昆虫食セミナー」に参加してから。自分も運営する側に回りたいと申し出て、試食会などイベント開催に協力してきた。

 今夏には、川辺さんとともに講師として昆虫食セミナーを開催。コオロギが入ったペペロンチーノや、ツクツクボウシのピザ、トンボの幼虫「ヤゴ」のサンドイッチを振る舞った。出席者からは「えぐみが多くて食感もじゃりじゃりするのではと思っていたが、食べてみると香ばしくて気に入った。抵抗感がなくなった」と驚きの声が上がった。

 昆虫食への抵抗感をなくそうと、精力的に活動する清水さん。大阪市のコーヒーショップと協力して開発した「コオロギコーヒー」は、クラウドファンディングで約50万円の費用を集め、商品化につなげた。コオロギの香ばしさと風味が特徴で、昆虫食の専門店や、通販サイトで販売している。清水さんはこう力を込める。「昆虫も肉や魚のような食材の一つになれば。栄養価も高いし食べ物として大きな魅力があるのでまずは味わってほしい」

 ■「有望な食材」起業相次ぐ

 世界の人口が2050年には90億人に達すると推定される中、昆虫は食糧難を救う「有望な食材」としてクローズアップされるようになっている。

 国連食糧農業機関(FAO)は13年、昆虫の活用を勧める報告書をまとめ、食用昆虫の飼育のメリットを指摘。牛や豚などの家畜と比べ、大量のエサや水、土地を必要とせず、途上国の不便な土地でも事業を起こせるほか、良質なタンパク質や脂肪などを含み、栄養価も高いと説明している。

 世界では甲虫類や毛虫・イモムシ類など1900種類以上の昆虫類が食べられており、昆虫料理研究家の内山昭一さん(70)によると、日本でも、長野県などでザザムシやハチノコ、イナゴといった昆虫が食べられてきた歴史があるという。

 内山さんは「昆虫は昔から食べられてきた優れた食材だ。セミナーなどで盛り付けや味付けが工夫された昆虫食を体験できる機会は、普及への足がかりとなる」と強調。「近年(清水さんのような)若者を中心に昆虫食への関心が高まり、起業も相次いでいる」と説明する。

 実際ここ数年、ベンチャー企業を中心に昆虫を活用する商品開発が盛んだ。無印良品を手がける「良品計画」は徳島大学のベンチャー企業と共同で、コオロギの粉末を使った「コオロギせんべい」を開発し販売。ベンチャー企業「BugMo」(京都市上京区)もコオロギを使った食品を売り出している。

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