お盆休みシーズンを迎えた8月8日、JR東京駅の新幹線ホームは例年に比べ閑散としていた。新型コロナウイルスの感染再拡大が止まらず、帰省の是非をめぐる論議が起きた。列島各地で暑さが本格化し熱中症リスクも懸念され、マスク姿で過ごす盛夏は息苦しさを増していた。
8月に入っても新型コロナウイルス感染の「第2波」は猛威をふるった。1日の国内の新規感染者は1535人。東京都は472人に上り、第3波が到来した11月18日に更新されるまで最多となる。
首都圏やほかの大都市圏でも状況は深刻さを増していた。8月1日の感染者数は埼玉県で74人、千葉県で73人と過去最多を更新。関西圏でも奈良県が19人、和歌山県が13人、三重県が11人と、いずれも1日当たりの最多を更新した。
このころ、感染者が増えていた沖縄県が医療崩壊の危機に立たされていた。県は1日に独自の緊急事態宣言を発令したが、医療態勢は厳しく、当初15日までだった宣言は、「引き続き大変厳しい状況」(玉城デニー知事)として延長された。
お盆の帰省 是非めぐり議論
再び「自粛論」も出始めた。お盆休みを迎え帰省の是非をめぐる意見が噴出したのだ。「お盆こそは」と帰省を辛抱していた人は多いだけに、政府や自治体も難しい判断を迫られた。
西村康稔経済再生担当相は2日の記者会見で、お盆の地方への帰省は感染が重症化リスクの高い高齢者に広がる恐れがあり「慎重に考えなければならない」と発言。だが、県境をまたぐ家族旅行を「Go To」で推進する一方、矛盾ともとれる対応に疑問の声が上がる。菅義偉官房長官は3日、「帰省を制限するとかしないとか方向性を申し上げたものではない」と述べ、西村氏の発言を軌道修正した。
だが、帰省で影響を受ける地方の知事のほか、帰省の起点となる東京都の小池百合子知事らからも慎重な対応を求める声が相次いだ。
「県民には、帰省する人々を温かい心で受け入れていただくことをお願いする」(青森県の三村申吾知事)という意見もあったが、ふたを開けるとやはり人出は鈍かった。JR旅客6社による7~17日の新幹線・在来線特急の主要線区の利用者は前年同期比76%減の354万9000人で、比較可能な平成2年以降で最少。高速道路のUターンの渋滞も例年に比べまばらだった。
ロシアがワクチン「完成」
新型コロナのワクチンや治療薬の開発が国家の威信をかけたプロジェクトになる中、ロシアのプーチン大統領は11日、世界に先駆けてワクチン「スプートニクV」を完成したと発表。旧ソ連が打ち上げた世界初の人工衛星の名にちなんだが、有効性には国際社会から疑問の声が上がった。
トランプ米大統領は3日、感染拡大で広がる大統領選の郵便投票に不正が起こりうると主張した。投票率上昇がライバル候補のバイデン前副大統領に有利に働くことを念頭に牽制(けんせい)した形だが、実際に選挙で物議をかもすことになる。
気象庁が「熱中症警戒アラート」
12日に累計の感染者数が500万人を突破した米国などに比べれば、日本の医療態勢は逼迫(ひっぱく)していたとまではいえない。ただ、雨が多く全国的に日照不足が目立った7月から一転、8月は寒暖計がぐんぐん上昇し、人々を熱波が襲った。日本はコロナと猛暑という二重苦との戦いを余儀なくされた。
気象庁は6日、熱中症の危険性が極めて高い天候が7日に予想されるとして、初めて「熱中症警戒アラート」を東京都と千葉県、茨城県に出すと発表した。このころ日を追うように各地で猛暑日の観測も相次いだ。熱中症による搬送も続出し、厚生労働省は人との距離が2メートル以上とれる場合などにはマスクを外すことも呼びかけた。
人々がマスク姿でかつてない暑さを実感していた盛夏、コロナ対策の最前線に立ち続けた安倍晋三首相に異変が起きていた。
(18)2020年7月23日~ 五輪なき連休 「第2波」ピーク