香港の著名な民主活動家、黄之鋒氏と周庭氏に2日、禁錮刑が言い渡された。執行猶予が付かない実刑判決は、両氏と国際社会の結びつきを断ちたい中国・香港政府の思惑通りとなった。今後、香港国家安全維持法(国安法)違反でも起訴されれば、収監が長期化する可能性が高く、香港の民主化運動にとって大きな打撃となる。
黄氏と周氏が当初否認していた起訴内容を最終的に認めたのは、情状酌量を訴えるための苦渋の決断だった。黄氏は11月23日の公判前、「政府への抗争継続と法廷闘争の両立は難しい」などと支持者に明かしており、抗争の早期再開のため刑の減軽を狙ったようだ。
それでも、実刑判決を免れることはできなかった。
昨年6月に本格化した反政府デモではこれまでに1万人以上が逮捕され、違法集結や暴動罪などで2千人以上が起訴されている。
連日のように一連の公判が行われる中、中国系香港紙が最近、情状を酌量した温情判決を厳しく批判し、その裁判官を個人攻撃するキャンペーンを展開している。裁判官さえも中国側の圧力にさらされているのが香港の現状だ。
黄氏らの事件を担当した王詩麗裁判官も、反政府デモ関連の事件の公判で、比較的厳しい判決を出す女性判事として知られる。
黄氏らの弁護側が11月23日の公判で、量刑に関し、一定期間の奉仕活動を命じる社会服務令が妥当と主張すると、王氏は「考慮に値しない」と一蹴した。周氏はこの時の心境を「すごく悔しく、やりきれない思いになった」と、面会に来た知人を通じて明かしている。
周氏は、8月に国安法違反の疑いでも逮捕されており、起訴されれば収監が長期化するとの見方が強い。黄氏も今後、同法違反で逮捕・起訴されかねない。
中国・香港当局は、米欧に対する黄氏の、日本に対する周氏の情報発信力と影響力を警戒している。2人の収監の長期化は、当局にとって好都合といえる。
日本語が堪能で日本文化を愛する周氏は、国安法違反の疑いで逮捕される前、本紙の取材にこう語った。
「人生でもう一度、日本に行きたい。それが今の私の夢です」
新型コロナウイルスの影響ではなく、政治的理由によって、そんなささやかな夢さえも実現が難しくなっているのが、今の香港だ。(藤本欣也)