児童虐待~連鎖の軛 第3部⑤

「愛着障害」向き合う母、悩み共有 過去と決別

負の連鎖を断つには、社会全体のサポートが不可欠だ(安元雄太撮影、写真は本文と関係ありません)
負の連鎖を断つには、社会全体のサポートが不可欠だ(安元雄太撮影、写真は本文と関係ありません)

心も体も限界だった。関西に住む30代の山岡昌代さん=仮名=は数年前、児童相談所に電話をかけ、自ら小学生の息子の保護を求めた。

息子が生まれて間もなくして離婚。それ以降、息子が言うことを聞かないと、頬をたたくなどの暴力が常態化した。

児相の指導を受けたこともあり、必死に怒りを押さえ込もうとした。だが、うまくいかない。「また、たたいてしまう」。残る選択肢は、息子と離れることだった。

山岡さん自身も虐待を受けて育った。小学生のときに父親が病気で死亡。そこから母親の態度は一変した。腫れるまで布団たたきで殴られ、冬に一晩中家の外にほうり出されたことは何度もあった。

「親からの愛情を感じられず、安心感を得られることがなかった」。人から見捨てられる不安が消えず、「もっと頑張らないといけない」と常に自分にプレッシャーをかけた。

出産後も、理想の母親像を追い求め、心の余裕をなくした。「絶対に母親と同じことはしない」と誓っていたはずが、息子が思い通りにならないと「私がこんなにも努力しているのに」と怒りがわきあがり、手をあげてしまった。

心に潜む傷

幼児期の愛情不足が原因で生じるさまざまな症状は「愛着障害」と呼ばれる。福井大の友田明美教授(小児発達学)によると、例えば好意に対して怒りや無関心で返してしまったり、逆に初対面の相手にも無警戒で、人との適度な距離感が保てなかったりする。