世界の論点

ASEAN困惑 米中主導権争い

豪州紙シドニー・モーニング・ヘラルド(電子版)は11月16日の社説で、RCEPによって中国と近隣諸国の間でサプライチェーン(調達・供給網)の統合が深まることで、「中国に外交的、政治的影響力を高める機会を提供することになる。各国が経済的に中国への依存度を低下させることは難しくなっていくだろう」と予測する。

既に豪州は、中国が経済での優位性を政治的圧力として利用する動きに直面する。中国は豪州が新型コロナウイルス発生について第三者による国際的な調査を求めたことに反発し、豪州産牛肉や大麦に対して輸入停止や高関税を課す措置に出た。最大の貿易相手国であることを武器に意趣返しに出た形だ。

社説は、中国が豪州に対して実施した一連の制裁措置について、「中国がRCEPに加盟して宣言した自由貿易の原則と矛盾している」と指摘。RCEPの枠組みがあれば豪州政府が中国当局者と直接交渉する機会を制度的に得られる利点に触れつつも、中国の姿勢を厳しく批判した。

中国がRCEPを通じて影響力を拡大することを警戒し、「(豪州は)中国と協力し共通利益を促進する必要があるが、中国の経済力と外交力が上昇することとバランスをとるために、(他国と)より広範な同盟関係を構築する必要がある」とくぎを刺した。

シンガポールの中国語紙「聯合早報」(電子版)は、20日の論説記事で「RCEPは拘束力の強くない貿易協定で、政治的な立場の違いを脇に置いて経済と貿易協力を促進するものだ」と分析し、地理的にRCEP加盟国の中心に位置するASEANが交渉で果たした重要性を強調した。米国が加わらない世界最大規模の自由貿易圏誕生は「アジア太平洋地域における米国の影響力低下を示すシグナルだ」とも表現した。

ただ、論説記事は中国による豪州への制裁措置の例を引用し、中国がRCEP発効後も意にそぐわない態度を示した加盟国に対し、協定が制限しない分野で「経済の棍棒(こんぼう)」をふるい続ける可能性を懸念している。自由貿易を推進するRCEPの枠組みを尊重し、中国が「ルールに基づいた行動」を取る重要性を強調した。(シンガポール 森浩)

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