世界の論点

ASEAN困惑 米中主導権争い

政府系シンクタンク、中国国際経済交流センターの黄奇帆副理事長(元重慶市長)は10月中旬に中国経済メディアに寄せた論評で、トランプ政権が中国を世界のサプライチェーン(調達・供給網)から切り離す「デカップリング」を呼び掛けたことについて、「米国のたくらみが目的を達することはないと固く信じるが対策は必要だ」と指摘。中国がRCEPや欧州連合(EU)との投資協定を進めていることに触れ、「もし中国がTPPに参加して米国が不参加ならば、最後にデカップリングされるのは米国人だ」とその戦略の一端を披露した。

一方で、この時期のTPPへの参加意欲表明は、米次期大統領に就任する見通しとなったバイデン前副大統領の政権をにらんだ動きという指摘もある。11月21日の環球時報(電子版)は「中国はバイデン氏に前向きな信号を発している」という著名エコノミストの王輝耀氏の分析を伝えた。トランプ政権が掲げた一国主義や米国第一主義から決別する方針をバイデン氏が表明している中で、TPPが米中間の新たな対話枠組みの一つになる可能性があると王氏は指摘した。「より多くの対話枠組みがあるほど、両国間の共通言語は多くなり、摩擦が少なくなる」と見る。

TPPは米離脱後に日本が主導する形で発効にこぎ着けたが、黄奇帆氏は「日本には主導力が足りない」と主張する。こうした発言は、中国がインド太平洋地域での多国間連携で主導権を握ることが十分に可能だと踏んでいることをうかがわせる。(北京 三塚聖平)

■シンガポール 米影響力低下を示すシグナル

東南アジアやオーストラリアは、日中韓や東南アジア諸国連合(ASEAN)など15カ国が参加する地域的な包括的経済連携(RCEP)の行方を注視する。アジア太平洋地域で自由貿易を促進する枠組みが構築されることは歓迎しつつ、中国が影響力を拡大させることを懸念。各国メディアはRCEPが内包する危うさに警戒感を隠さない。

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