朝晴れエッセー

お好み焼き屋のおばちゃん・11月29日

「お好み焼き屋のおばちゃん」。これが母の愛称です。家の片隅で昼の3時間だけ営業している、ご近所さんの井戸端会議場です。

ひと昔前には、お見合い写真の預かり場所にもなっていたそうです。若いお客さんには、ご飯とみそ汁付きの大サービス。

お店を始めたころから地場産のソースを使っていたので、新聞にも掲載され、一時は大繁盛で遠方からわざわざ来てくださり夕方まで営業したものでした。

しかし、父が認知症になり目が離せなくなって店を閉めることとなりました。タオルハチマキで30年間頑張ってきました。その父も数年後に亡くなりました。

その後、母も認知症や大腿骨(だいたいこつ)骨折、脳梗塞で施設での生活が始まりました。

施設のパーティーでも「お好み焼き屋のおばちゃん」、散歩の途中でも「ああ、お好み焼き屋のおばちゃんや!」と声がかかります。

その母が9月に施設の皆さんに見守られ他界しました。

葬儀場の計らいで祭壇にお好み焼きが供えられました。

そして、納棺のとき「お好み焼きもいっしょに入れてください」と担当の女性のお言葉で、ひ孫たちが笑顔でどこに入れようかとうれしそうにしているのをみんなで見守りました。

最後まで「お好み焼き屋のおばちゃん」です。

中條昭子(66) 神戸市北区