公開中~公開間近の作品から、文化部映画担当の編集委員がピックアップした「シネマプレビュー」をお届けします。
★★★★★ 傑作
★★★★ 見応え十分
★★★ 楽しめる
★★ 惜しい
★ がっかり
(☆は★の半分)
■「アーニャは、きっと来る」
★★★★
1942年、ナチス占領下のフランス・ピレネー山脈の麓の小さな村に住む13歳の羊飼いの少年、ジョーが主人公。ある日、ナチスの迫害から逃れてきたユダヤ人男性と知り合い、ユダヤ人の子供たちを山の向こうの中立国、スペインに逃がす救出作戦に協力することになる…。
ナチスによるユダヤ人迫害を扱った作品といえば、目を覆いたくなるような悲惨な状況が描かれ、沈痛な面持ちで劇場を後にすることも少なくない。
しかし本作は、原作が児童文学ということもあり、ナチス占領下で少年がユダヤ人やドイツ兵と関わりながら人間として成長していく話で、鑑賞後も晴れ晴れとした気分でいられた。エンディングもいい。
ジョーの祖父をフランスの名優、ジャン・レノ、そしてユダヤ人をかくまう変わり者の老婦人を米映画「アダムス・ファミリー」のアダムス夫人で知られるアンジェリカ・ヒューストンが演じており、この2人が、作品全体に深みをもたらしていた。家族連れでぜひ見てほしい。
27日から東京・新宿ピカデリー、大阪ステーションシティシネマなどで全国公開。1時間49分。(啓)
■「アンダードッグ」★3・5
★★★☆
武正晴(たけ・まさはる)監督、脚本の足立紳(しん)ら「百円の恋」のスタッフが、再びボクシングを通じ、人生の輝きは勝者だけのものなのかと問いかける。ボクサーに限らない。あらゆる人々の人生の問題だ。全8話の有料配信ドラマを映画用にまとめた。それでも前後編で都合4時間以上。長い。だが、それぞれのラストで迫真のボクシング場面を見せる。どちらも胸が熱くなる。この2つの試合を見せるためには、避けられない構成か。社会の底辺で生きるアンダードッグ(負け犬)しか出てこないが、彼らは敗残者なのか。15歳以上が対象。
27日から東京・イオンシネマ板橋、大阪・シネ・リーブル梅田などで全国順次公開。前編が2時間11分、後編が2時間25分。(健)