来月、全国公開されるクライムサスペンス映画「サイレント・トーキョー」はクリスマス・イブに東京で連続爆破テロ事件が起きるという設定だ。その容疑者、朝比奈仁(じん)を演じた佐藤浩市(59)は、「昨今の日本映画の中では出色の出来栄えではないか」と自信をのぞかせる。(水沼啓子)
ハチ公前広場を爆破
ジョン・レノンとオノ・ヨーコの楽曲「ハッピー・クリスマス(戦争は終わった)」にインスパイアされ執筆した秦建日子(はた・たけひこ)の小説が原作だ。映像化にあたり、爆発物が仕掛けられた場所など、いくつかの設定が変更されている。
本作は容疑者や被害者らの群像劇であると同時に、ストーリーがスピーディーに展開しているのが特徴。「登場人物たちの背景をできる限りそぎ落としてくれたので、邦画では珍しいくらいドライに描かれている。それが僕には非常に新鮮に見えた」と語る。
また、自身が演じた役について「観客を混乱させるポジションにいるキャラクター」と、ネタバレを気にしながら簡略に説明した。
ハイライトは、渋谷のハチ公前広場が爆破されるシーンだ。総工費約3億円をかけ栃木県足利市にオープンセットを建設し、渋谷スクランブル交差点と渋谷駅前を再現。総勢1万人のエキストラが参加し、撮影には約2週間が費やされた。
「渋谷の爆破シーンは、映画館のスクリーンで見ないともったいない。そのぐらいCG(コンピューターグラフィックス)班の気合が入っているシーンだ」と話した。
「コロナ禍ともリンク」
作品はコロナ禍前に撮影された。「コロナ禍を経験し、またこれからどうなるか先が見えない状況だ。この作品が投げかけているメッセージとリンクする部分があるのではないか」
〈あらすじ〉 12月24日、東京・恵比寿で爆破事件が起きる。買い物客の主婦と現場にいたテレビ局の契約社員が実行犯へと仕立てられ、渋谷を標的とする次の犯行予告が。犯人は首相との直接対談を要求し、期限は午後6時。ハチ公前広場にやじ馬が集まる中、その時がくる。犯人の目的は一体何なのか…。
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12月4日から、東京・丸の内TOEI、大阪・梅田ブルク7などで全国公開。1時間39分。