島を歩く 日本を見る

大陸とのクロスロードに立つ 対馬島(長崎県対馬市)

【島を歩く 日本を見る】大陸とのクロスロードに立つ 対馬島(長崎県対馬市)
【島を歩く 日本を見る】大陸とのクロスロードに立つ 対馬島(長崎県対馬市)
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 古来、九州と朝鮮半島のはざまに位置し、大陸とのクロスロードとして日本の要衝であった「国境の地」。それが長崎県の対馬(つしま)島(対馬)だ。

 南北82キロ、東西18キロの細長い地形。島の89%が深い森に覆われ、国の天然記念物であるツシマヤマネコなど独自の生態系で知られる。仏教や漢字、稲作などさまざまな文化が大陸から対馬へ渡り、日本全土へと伝わっていった。

 「魏志倭人伝」には、倭国(わこく、日本)の一国として描かれており、「古事記」の国生み神話では、最初に創造される日本の国土の一つに登場する。

 今年7月、元寇の際の対馬を舞台にしたゲームソフト「ゴースト・オブ・ツシマ」が発売され、爆発的な売り上げを誇って話題となった。ゲームの通り、対馬は有史以来、遣隋使、遣唐使、元寇、豊臣秀吉の朝鮮出兵、朝鮮通信使、日露戦争など、日本の最前線に立って防衛や外交を担ってきた。

 晴天の日、上対馬町の韓国展望所や豊玉町の烏帽子(えぼし)岳展望台に立つと、韓国(釜山市)の街並みが見える。対馬から直線距離で約50キロの近さと旅客船の低価格化で、10年前ごろから韓国人観光客が増えたという。しかし、昨今の冷え込んだ日韓関係と新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、ピーク時で40万人に及んだ韓国人観光客は蒸発した。それでも対馬には、大陸と日本の架け橋として、激動の時を幾度となく乗り越えてきたしたたかさと底力がある。和多都美神社の平山雄一禰宜(ねぎ)は、「古事記に基づき島案内をしていきたい」と語る。今こそ、日本人のルーツとしての対馬を国内に知ってほしいと願っている。

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