鑑賞眼

「PSYCHO-PASS VV2」 近未来のデストピアに響く「生きたい」

舞台「PSYCHO-PASS VV2」
舞台「PSYCHO-PASS VV2」

 テレビアニメ、映画、舞台のいずれからでも世界観に触れることができる、良質なメディアミックスの力を感じた。

 本作は、「踊る大捜査線」で知られる本広克行が総監督を務めたオリジナルテレビアニメ「PSYCHO-PASS」のスピンオフとして、昨年4、5月に上演された舞台の第2弾である。アニメには出ない人物を描いた前作の前日譚というオリジナル脚本。アニメも前作も知らない初心者にはハードルが高かろうと思いきや、実によくまとまっていた。

 サイコパスとは、人間の精神状態を数値化した値のこと。近未来の日本では、シビュラシステムと呼ばれる福祉支援システムが、人々のサイコパスの値から反社会的傾向や職業適性を判定。犯罪を起こす危険が高いとされると、「潜在犯」として隔離される。作品の世界観を構築するこうした基本情報は冒頭で簡単に説明されるだけだが、それさえ理解できれば楽しめる。

 ストーリーの核は「管理されたシステム社会への反乱」であり、その反乱は成功しない。5人の命を助けるために1人を犠牲にすることが許されるのか、という「トロリープロブレム(トロッコ問題)」を主題に据えた着想が光る。手を加えても何もしなくても誰かの「死」は避けられず、そこにあるのは間違いなくデストピアである。にも関わらず希望が感じられるのは、登場人物からほとばしる「自分らしく生きたい」という思いが、演者を通じてストレートに伝わってくるからであろう。ここに、「舞台化」の意味がある。

 ライブカメラで撮影された演者の顔がスクリーンに映されて会話が進む演出は、コロナ禍ですっかり慣らされたテレビ会議のようだ。映像でのみ出演する人物も、このスクリーンを使えば舞台のどこかにいるように感じられる。

 和田琢磨と荒牧慶彦という、2・5次元舞台を中心に活躍する人気俳優2人を主軸に、若手とベテランをバランス良く配した。和田と荒牧が刀を振るう迫力のシーンには、これまで多くのアクションをこなしてきた経験が生きる。紅一点の青野楓は演技に硬さは残るが、切れのある動きが目を引く。

 息もつかせぬ緊張感ある展開にはもう少し緩急が欲しいし、人物の掘り下げ方にも物足りなさは残る。ただ、それは登場人物に魅力があるからこそだ。第3弾があるなら、今度は荒牧演じる神宮寺司の過去を描いてほしい。

 29日まで、東京・浜町の明治座。12月3~6日、大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール。0570・200・114。(道丸摩耶)

 公演評「鑑賞眼」は毎週木曜日正午にアップします。

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