勇者の物語

「目立ったらアカン。イメチェンやな」 虎番疾風録番外編117

近鉄の監督に就任した西本は背番号「68」をつけた。右は太田=藤井寺球場
近鉄の監督に就任した西本は背番号「68」をつけた。右は太田=藤井寺球場

■勇者の物語(116)

11月12日、阪急の森薫オーナーは西本幸雄に会い、球団が考えているポストと近鉄から監督としての要請があることを伝えた。西本はありがたく頭を下げた。

「机に向かう仕事はわたしには向いておりません。それに何もせずにお給料をもらうのも、私の性に合わない。できれば現場に出たいと思っております」

森オーナーは快く了承した。

16日、午前10時から大阪市北区の新阪急ホテルで西本の近鉄監督就任が発表された。

「なんとか西本君の功労に報いたいという気持ちが、彼を現場に復帰させる決め手になった。できれば阪急にいてほしかったが、贔屓(ひいき)の引き倒しになっては、なんにもならない」と森オーナー。そして今里オーナー代理も「勇気を出してよかった。これで近鉄は強くなります」と声を詰まらせた。

〝現場一筋〟復帰の決まった西本監督の目は輝いていた。

西本「ボクの思う通りのチームを作るために、思い切った手を打たねばならん。どこまで球団に協力してもらえるかや」

--どんなチームにしたいか

西本「いままで外から見る限りでは、技術以外に欠けたところがあるように思う。厳しさやな。これを直すことが第一。キャンプでも門限がルーズらしい。これじゃいかん。帰宿時間をチェックするため、久しぶりに〝門番〟をやろうと思っとるんや」

--阪急と戦うのはやりにくいか

西本「師弟対決でお客さんが来てくれるやろ。ウエ(上田監督)の方が困るんとちゃうか。イケ(長池)、チャ(加藤)、フク(福本)みんなどこが弱いか知っとるからな」

--ずばり優勝の見通しは

西本「阪急時代みたいに5年も6年もかけたんでは年をとってしまう。阪急より素質のある若い選手が多いし、2年後に足掛かりをつかんでおきたいな。それより、ワシも大いにイメチェンを図るつもりや」

西本監督は背番号に「68」を選んだ。「これからは監督が目立ったらアカン。そやから、角のない丸い数字にしたんや。イメチェンやな」。なんともかわいい監督である。(敬称略)

■勇者の物語(118)

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