朝晴れエッセー

ダイコンの夢・11月24日

以前お手伝いに行った農家では今頃、ダイコンを出荷する最盛期ではなかろうか。

1日数千本のダイコンを出荷するのだが、天気の良い日は足元もよいが雨が降れば過酷である。畑はぬかるみ足首ぐらいまで埋もれる。長靴には土が付き足取りも重くなる。

体の小さな奥さんは、それでもご主人に負けまいと頑張っておられる。太く重いダイコンを1本ずつ引っこ抜き、腕に抱えてふんばるが、足がよろめく。

抜き取ったダイコンは、葉を切り取り、土を洗い落とすため風呂に入れるように水槽に入れる。

秋はあっというまに日が沈み暗くなる。裸電球の下で水槽に沈んでいるダイコンを拾い上げ、わが子を洗うように慈しみ手で土を落としてやると、子供が足をバタつかせるように水滴が顔や服をぬらす。

積み重ねられた洗い終わったダイコンは、透き通るように白くまぶしいほど美しい。お嫁に行っておいしいと食べてもらえと祈る。

翌朝一番に1本ずつ検品をして箱に詰めて出荷するが、素人の私には良品も不良品も判別ができない。小さなシミのような傷痕でも不良品という。

味には関係ないと思いつつ、産地の信用に傷を付けてはいけないと厳しく検品される姿を見て、自分自身をもっと大切にしなければいけないと気分を引き締めた。

いまも店頭に行くと自然とダイコンに目が向き、売れ残った1本のダイコンがあれば、妻の持つ買い物カゴにかわいそうにと入れてやる。

溝上正八郎(73) 広島県福山市