米財務長官にイエレン氏 バイデン氏方針と報道、初の女性

 【ワシントン=塩原永久】米大統領選で当選を確実にした民主党のバイデン前副大統領が、財務長官候補にジャネット・イエレン連邦準備制度理事会(FRB)前議長(74)を指名する方向になったと米メディアが23日、一斉に報じた。実現すれば女性として初の財務長官となる。金融政策を握るFRBの前首脳を、財政政策を主導する財務長官に充て、新型コロナウイルスの打撃を引きずる米経済の再建を託す。

 イエレン氏の人事案実現には上院の承認が必要だ。バイデン氏は財務長官候補に、民主、共和の両党から支持を得られる人物を選ぶ方針を示していた。

 イエレン氏はオバマ民主党政権下の2014年にFRB議長に就任。議会承認の採決では共和党議員を含む賛成票を得た。08年の金融危機「リーマン・ショック」後の金融政策の正常化に道筋をつけ、トランプ共和党政権下の18年2月に1期4年で退いていた。

 イエレン氏はFRB要職を長く経験。政財界に人脈を築き、米中央銀行トップとして敬意を集めた。

 米国は新型コロナの感染者数や死者が世界最多で、景気と雇用への悪影響が長期化する公算が大きくなっている。財政、金融の政策が両輪となった景気対策が政府に求められる中、バイデン氏は大物経済人を財務長官に充て、安定した政策運営を目指すとみられる。

 一方、米財務省はこれまで中国の為替政策に厳しい目を光らせ、19年夏には一時、中国を「為替操作国」に指定した。イエレン氏は中国の不公正な貿易慣行を問題視する発言をしているものの、人民元の為替問題をはじめとする対中政策は未知数だ。

 イエレン氏は労働経済学の専門家。FRB議長の退任後は、米有力シンクタンクのブルッキングス研究所に在籍していた。

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