Q 40歳代の女性です。平成29年、不妊治療で受診していた婦人科で「子宮に異物がある」との指摘を受け、別の総合病院婦人科で検査したところ、子宮頸部(けいぶ)のLEGH疑いとの診断でした。医師からは「不妊治療を優先して大丈夫」と言われ、30年に出産できました。令和2年8月、MRI(磁気共鳴画像)検査で2センチ大のLEGHが疑われ、「悪性になる可能性も数%あるため子宮全摘出を勧める」と言われました。
A お子さんを無事授かったのはよかったですね。LEGHの正式名称は分葉状子宮内頸部頸管腺過形成といい、子宮頸部(子宮の下部で腟腔に接する部分)が子宮体部(胎児が発育する部位)へ連なる部位で、頸管腺が過剰に増殖している状態を指します。
Q 主治医からは子宮頸部円錐(えんすい)切除術をして調べる話も出ています。
A LEGHの大部分は、子宮の入り口から3~4センチ上方にあるため、正確な病理診断は困難です。円錐切除術は通常、膣入口から1・5センチほどの部位を切除しますので、LEGHの病巣があっても届かないことが多く、切除しても「悪性所見なし」と判断されることがあります。
Q 悪性になる確率は小さいのに、子宮の全摘出は必要なのでしょうか。
A 細胞診は受けていますか。LEGHの診断には子宮頸管内膜細胞診が重要です。細胞診では子宮頸管ブラシを子宮腔内に挿入して頸管内膜細胞を擦過して採取します。細胞診で異型腺細胞(AGC)があるかどうかを調べてもらうべきです。
Q どのような治療が想定されますか。
A 私たちは、MRIと細胞診の所見、透明で粘液性の帯下(たいげ、おりもの)の増加などを勘案して、以下のように経過観察か、手術かを決めます。
(1)MRIで頸管腺が整然と配列しており、細胞診でAGCが認められなければ、悪性の心配が少ないLEGHもどきと判断され、原則、経過観察になります。ただし、この場合でも、粘液性帯下の異常な増加があれば、子宮筋腫などの良性疾患に適応する子宮全摘術を勧めます。
(2)MRIで頸管腺がふぞろいに配列し、細胞診でAGCが認められれば、悪性の可能性を否定しきれないLEGHと診断し、良性疾患に適用するより、少し拡大した子宮全摘術が推奨されます。
(3)MRIで子宮頸部の前後左右の非対称的腫大(腫れ)があり、頸管腺の過剰増加・ふぞろいな配列、腺管相互の密接(腺管と腺管の間の組織が少なく密接)が強く、悪性を疑うAGCが出現している場合は、子宮頸部初期がんに対応する子宮全摘術+両卵巣卵管の切除を勧めます。さらに、組織検査で悪性の疑いが強いとなれば、骨盤リンパ節郭清(かくせい)も勧めます。
(4)一番厄介なのは、良性疾患に対応する子宮全摘術施行後に病理検査でLEGHではなく、腺がんが認められる場合です。再手術を行うか、同時的化学放射線療法(CCRT)を行うか検討することになります。
(構成 大家俊夫)
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回答は、がん研有明病院の瀧澤憲医師(婦人科前部長)が担当しました。
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【ミニ解説】
今回の相談者は、婦人科を受診したことでLEGHの疑いと診断された。一般的にはどのように発見されるのだろうか。瀧澤医師は次のように話す。
性成熟期女性の排卵前後には腟分泌物のおりものが増加しますが、以前と比べ著しい増加がある場合、受診して見つかることがあります。子宮・卵巣の良性疾患でMRI撮影を実施したら、LEGHが疑われることもあります。本質的には良性で、30~40歳前半に多いです。