米大統領選は民主党のバイデン前副大統領が勝利を確実にしたが、共和党のトランプ大統領が敗北を認めず、混乱が続いている。こうした状況に、中国の官製メディアは米国社会の分断が「臨界点」に達したと冷ややかに見つつ、分断は米国の政治体制の限界によるものだとして中国の体制の正当化に余念がない。一方、韓国では、バイデン氏が悪化した日韓関係の修復を求めると予測し、文在寅(ムン・ジェイン)政権の反日志向をたしなめる論調が出ている。
≪ポイント≫
・中国メディアは米政治体制の限界を指摘
・中国の体制を正当化したい思惑も透ける
・バイデン氏が日韓関係修復求めると予測
・文在寅政権の反日志向を批判する論調も
中国 分断、米国の政治体制の限界
中国メディアは、米大統領選によって「米国の分断が臨界点に達した」(共産党機関紙、人民日報系の環球時報)などと米国の危機を強調している。トランプ米政権が新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)をめぐり中国の責任を追及し、中国共産党の脅威を強調しているのも全て米国の政治制度の弊害だと断定しており、米国の混乱を中国の政治体制の正当化に利用したい思惑が透ける。
中国政府系英字紙チャイナ・デーリーは4日付社説で「米国の多くの人々は選挙結果が市民の暴動や社会の混乱を引き起こすとの予想から最悪の事態に備えている」と指摘。店主たちがガラス窓を板で覆い、住民らは自宅を守るために弾薬を買いこんでいるとの現地報道を紹介した。
社説は、新型コロナを制御できない米政府の無能によって引き起こされた荒廃が「まだ続きそうだ」とし、米国の政治制度の欠陥や脆弱(ぜいじゃく)性が現在のパンデミックによって暴露され、米国を政治的・社会的な危機に陥れていると断じた。
「なぜ米国の政治はここまで堕落したのか?」。社説は、コロナの封じ込め失敗や格差拡大、深刻な人種問題は全て、米国の政治システムが衰退していることの兆候だと主張。にもかかわらず、米国の政治家にとっては「自身の問題を解決するため現実的な努力を重ねるよりも、他国を非難するほうが非常に簡単」であり、「それが大統領選で2人の候補が中国を攻撃し続けた理由だ」と結論付けた。また、「コロナの封じ込めで偉大な業績を挙げた中国が、ウイルスを米国や世界に拡散したという事実に反した非難を受けていることの理由でもある」と自己弁護した。