EU懸念の中、ロシア製ワクチン調達交渉 ハンガリー

ベラルーシの首都ミンスクで、ロシアの新型コロナウイルス感染症ワクチン「スプートニクV」の臨床試験を受ける男性(左)=10月1日(タス=共同)
ベラルーシの首都ミンスクで、ロシアの新型コロナウイルス感染症ワクチン「スプートニクV」の臨床試験を受ける男性(左)=10月1日(タス=共同)

 【ロンドン=板東和正】東欧ハンガリーが、ロシアで開発された新型コロナウイルスのワクチン「スプートニクV」の調達に向けた交渉を進めている。欧州連合(EU)加盟国によるロシア製ワクチンの調達は初めて。EUは、安全性への疑問が指摘されるスプートニクVのEU市場参入に懸念を示している。

 英メディアによると、ハンガリー政府は19日にスプートニクVのサンプルを輸入した。政府は12月にサンプルを用いた臨床試験(治験)を行い、有効性が確認されれば来年1月後半から大規模な調達を開始する方針。ハンガリー国内でのスプートニクVの生産も検討しており、地元の製薬会社と協議している。

 強権的な体制を構築するハンガリーのオルバン政権はワクチン調達を通じてロシアとの関係強化を図っているとみられる。これまでも、ロシア産エネルギー資源への依存度を高めるなど接近姿勢を示してきた。

 一方、EU欧州委員会の報道官は英メディアに対し、ロシア製ワクチンの調達計画は「安全性の懸念があり、(EU内で)ワクチンへの信頼を損なう可能性がある」と警告する。

 スプートニクVをめぐっては、開発した国立研究所などが今月11日に発症を防ぐ有効性が92%に上ったと発表した。だが、英紙フィナンシャル・タイムズによると、スプートニクVの治験の規模は、90%以上の有効性が示された米ファイザーや独ビオンテックの治験に比べてはるかに小さい。

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