【粂博之の経済ノート】財政規律を「神話」と説く現代貨幣理論(MMT)の理屈(1/3ページ) - 産経ニュース

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粂博之の経済ノート

財政規律を「神話」と説く現代貨幣理論(MMT)の理屈

 年末に向け政府の来年度予算案編成作業が本格化する。新型コロナウイルス対策のため例年に増して物入りで、財政赤字、政府債務は膨張し、多くの経済学者が警鐘を鳴らす。ただ、政府は必要に応じてお金を発行できるのだから問題はないという説もある。現代貨幣理論(MMT)だ。政府・日銀は異端視している説だが、今の日本はMMT的な世界に足を踏み入れたようにもみえる。財政はヤバいのか?大丈夫なのか?

財政均衡は「クレイジー」な目標

 大型書店に行けば、いくつものMMT解説書が並んでいる。その中でも「第一人者によるバイブル」のうたい文句が目を引く『MMT現代貨幣理論入門』(L・ランダル・レイ著、東洋経済新報社)を開いてみよう。

 貨幣とは何なのか、から議論は出発する。取引の仲立ちをする「流通手段」として発明され、商品やサービスの「価値尺度」や、富を蓄積する「価値貯蔵」の機能も備えている-というのが一般的だが、MMTはこれに「租税が貨幣を動かす」という説明を加える。

 政府は、政府自身が発行した貨幣で租税の支払いを受けると約束。国民は納税しないと罰せられるので貨幣を欲する。商品の対価や給料として貨幣を要求するのも納税手段を得るためで、その結果、貨幣は広く流通する-という理屈だ。

 また、貨幣の発行を「政府の支出」と表現。同書は、政府予算の均衡(赤字ゼロ)とは、政府の支出が「納税により『返却』されてしまい、その結果、非政府部門(民間)には何も残らない」ことだと主張し、「なぜこんなクレイジーな目標をみんなが支持するのか理解に苦しむ」と挑発的だ。

 ここで基礎となるのが、経済を政府部門▽国内民間部門▽海外部門-の3つに分ける考え方。政府が赤字(マイナス)のときは国内民間と海外は黒字(プラス)、政府が黒字のときは国内民間と海外が赤字-など、それぞれの収支を足し合わせるとゼロになると説明する。経済学の一般的な公式とも整合する。