新型コロナウイルスの1日あたりの感染者数が18日、東京で493人となり過去最多を更新するなど、各地で感染拡大が続く中、明確な症状がなくても自費でPCR検査を実施するケースが増えている。当初は個人での利用が多かったが、経済活動の再開に伴い企業主導の利用が増加。ただ、医師の判断を介さない検査機関では陽性の疑いがあっても保健所に届け出る義務はなく、感染の実態把握に空白が生じる懸念も残っている。(荒船清太)
「第2波、第3波など、感染拡大のニュースが増えるのに伴い、利用者が増える傾向にある」
PCRの自費検査を手掛ける大森町駅前内科小児科クリニック(東京都大田区の)の柳沢亮院長はそう話す。
同クリニックでは現在、毎日50件程度のPCR検査を実施しているが、そのうち約半数が自費だ。
柳沢院長によると、自費検査を始めた当初の6~7月は漠然とした不安を抱える個人の利用者が多かったが、最近は企業主導の検査が主流という。
特に多いのが海外出張・転勤などに伴う検査。新型コロナの陰性証明を渡航先が求めるからだ。社内で感染者が判明したときに保健所から濃厚接触者と認定されなかった社員の検査を依頼される例も目立つ。
同クリニックの自費検査費用は2万8千円。他の医療機関の相場もおよそ1万~4万円で、医療関係者によると、検査用の人件費、検査委託費などが加味されている。
人との面会に備えて受ける利用者もいる。埼玉県在住の70代男性は9月、都内での会食を前に数万円を支払ってPCR検査を受け、陰性の結果を得た。「人に感染させる確率が減らせてほっとした」と話す。