政府は7月22日、新型コロナウイルス感染で打撃を受けた観光業界を支援する「Go To トラベル」事業を前倒しで開始した。だが、感染拡大の第2波を迎えた東京都を対象とするか、キャンセルを補償するかなどをめぐり方針が迷走。日本中が混乱する騒動となった。
政府は「Go To トラベル」を当初8月に始める予定だったが、赤羽一嘉国土交通相は7月10日の会見で、「夏休みが支援の対象になるようにとの要望が強かった」と説明した。
トランプ氏が初のマスク姿/インド感染者100万人超 「コロナをめぐる動き」グラフィックを見る
だが、自粛していた帰省や観光を心待ちにする人々がいる一方で、首都圏では新型コロナウイルスの感染者が再び増えており、東京都は12日に206人と4日連続で200人を突破。小池百合子知事は15日、「不要不急の都外への外出はできるだけお控えいただきたい」と呼び掛けた。
開始まで1週間を切った翌16日、政府は東京だけを事業対象から除外したが、準備不足の見切り発車という感は否めない。制度に参加する旅行代理店や予約サイトの決定は間に合わず、旅行者は後日還付手続きをする必要が生じた。鬼怒川温泉(栃木県日光市)の老舗「あさやホテル」では、16日からの一昼夜だけでキャンセルが200件以上あり、「大口の東京が除外では効果も半減」と嘆いた。
キャンセルの扱いも迷走した。赤羽国交相は17日、「国として補償は考えていない」と明言したが、同じ公明党の石田祝稔政調会長が同日、「国が考える必要がある」と待ったをかけると、菅義偉官房長官は20日、「必要な対応を早急に行う」と方針を転換した。
トランプ氏、公の場で初のマスク姿
欧州連合(EU)は17日から対面方式の首脳会議を約5カ月ぶりに開き、7500億ユーロ(約92兆円)の「復興基金」設立で合意した。協議は難航したが、新型コロナ恐慌への危機感が加盟国の背中を押した。
一方、米国や新興国はウイルスの押さえ込みに苦心しており、世界はまだら模様になっていた。
トランプ米大統領は11日に首都ワシントン郊外の軍医療施設を訪れた際、公の場で初めてマスク姿を見せた。16日に累計感染者が200万人を超えたブラジルのボルソナロ大統領もマスク嫌いで知られたが、自身が感染した。インドは17日に累計感染者が100万人を超えたことが判明。都市封鎖が段階的に解除され、行き来が増えていた。
世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は13日、「多くの国が間違った方向に行ってしまっている」と述べた。
「2500人限定」観客入れ大相撲初日
将棋の高校生棋士、藤井聡太七段(当時)が16日、棋聖戦を制し、タイトル獲得最年少記録を更新(17歳11カ月)。普段は将棋をほとんど取り上げないテレビのワイドショーまでが活躍を報じ、コロナ禍で沈む社会に明るい話題を提供した。
19日に大相撲7月場所が初日を迎えた。観客を入れるのは初場所以来で、1日約2500人に限定し声援は禁止。白熱した一番に拍手で応えた。プロ野球とJリーグも10日から観客を入れて公式戦を再開したが、安倍晋三首相は22日、上限5000人の制限を8月末まで維持すると表明。西村康稔経済再生担当相は18日、今後の大規模イベントの緩和方針について、「基本的には慎重に考えなければならない」と述べた。
感染経路は夜の街以外に、同居家族、会食、公共スペースなどに広がっていた。劇場でのクラスター(感染者集団)も発生。10日に最初の感染者が判明した都内の「新宿シアターモリエール」(新宿区)は、最終的に出演者や観客ら75人に上った。
梅雨前線が停滞し、都心は18日まで19日連続で雨を観測。全国的に日照不足で野菜などが高騰し、梅雨寒で体調を崩す人も目立った。九州豪雨の被災地では避難所の感染対策も課題となっていた。
(16)2020年7月1日~ 「第2波か」首都圏での感染拡大
(18)2020年7月23日~ 五輪なき連休 「第2波」ピーク