一筆多論

ヤルタ密約「引き渡し」論議を 岡部伸

もう一人の当事者、チャーチル氏は53年2月、イーデン外相宛てに「米ソ首脳が頭越しで決定した。米ソとの結束を乱したくなかった」と不本意に密約に署名したことを示す書簡が英国立公文書館にある(同年2月22日付)。

ヤルタ協定に対する英国政府の立場について2006(平成18)年2月8日、鈴木宗男議員が国会で質問し、外務省は「英国政府の見解は、(ヤルタ協定に拘束されないという)わが国の認識を否定するものではない」と回答している。英国が米国同様、公式にヤルタ密約の法的有効性への疑念を表明すれば、ロシアの領土占有根拠は崩れる。

また同公文書館所蔵のヤルタ密約原本には、「引き渡し」の言葉はソ連側で作られ、書かれていた。

ヤルタ密約と日ソ共同宣言の「引き渡し」は、くしくもロシア語では「ペレダーチャ」で同じだ。

日ソ共同宣言に対するプーチン氏の解釈でいえば、ヤルタ密約でも根拠を示していないため、千島列島の主権はロシアに移らず、いまだに日本の主権下にあることになる。

菅首相には、プーチン氏と首脳レベルで、法解釈に基づく「引き渡し」の根本的な議論を徹底的に行ってもらいたい。それこそ北方領土交渉の要となるだろう。(論説委員)

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