いきもの語り

装具で獣医療の現場変える 動物専門の義肢装具士・島田旭緒さん 

【いきもの語り】装具で獣医療の現場変える 動物専門の義肢装具士・島田旭緒さん 
【いきもの語り】装具で獣医療の現場変える 動物専門の義肢装具士・島田旭緒さん 
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 看護師に抱かれたポメラニアンのコタロウ(6)の前脚の肘の部分には、黒い装具が取り付けられていた。5日、横浜市の動物病院「アールポウ」の診察室。装具を手がけたのは町田市の島田旭緒(あきお)さん(40)。オーダーメードの装具を作る動物の義肢装具士のパイオニア的な存在だ。

 コタロウは平成30年12月ごろに腎臓や肝臓の機能が低下するアジソン病を発症。その影響で骨に穴が開き、前脚が脱臼。ほふく前進のように前脚の肘をついてしか歩けなくなってしまった。

 当初は包帯で固定していたが、同院が装具の着用を提案。昨春に島田さんと出合い、関節の固定と肘をついて歩行する際の擦り傷からの保護を目的に装具を作成。この日は2つ目の装具のフィッティングに来ていた。飼い主の宮口ちよ子さん(72)は「なんとなく歩けていたが、不自由そうだった。装具をつけるようになって階段も上れるようになった」と笑顔を見せた。

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 島田さんが動物の義肢装具に興味を持ったのは専門学校時代。動物の医療現場で用いられている義肢装具を調べたところ、そもそも製品として存在しないことが分かった。

 卒業後、人間の義肢装具の製作会社で勤務していたときに転機が訪れた。会社の同僚の飼い犬が事故に遭い、背骨を骨折。手術後に獣医が手作りしたコルセットを着用しているのを目の当たりにした。

 「やっぱり装具は必要だ」。その獣医を訪ね、「自分に作らせてください」と頭を下げた。

 日中は人間用の義肢装具を作り、夜間や休日に動物用を作る日々を3年間送り、19年に町田市で東洋装具医療器具製作所を創業した。現在では全国から年間約3千件もの依頼が舞い込むまでに成長した。

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