朝晴れエッセー

ハプニング・11月13日

82歳で一人暮らしをしている母は、歌ったり、本を読んだり、友達とおしゃべりをしたり、万歩計を持ちながら散歩をしたりと、一人暮らしを楽しんで過ごしてくれている。

しかし、このご時世全ての娯楽がストップしてしまった。夏頃、少しずつ遠くのスーパーなどに行くようになり、私が一緒のときに一駅先のスーパーまで久しぶりに電車で行ってみようということになった。

最寄りの駅まで15分歩いて到着した電車に乗り、席に座った瞬間に気付いたのだ。母がマスクをしていないことに。

駅に着いてから気付けば購入して済んだことなのに、車内で気付いてしまった私は、慌てて予備を探すがそんなときに限って持っていない。母は母で口を押さえて下を向いている。2人して気分はなぜか犯罪者のようになってしまっている。

「これ、使ってください」

前の席に座っていた女の人がマスクをくださったのだ。「私もよくありますから」とにこやかな笑顔で。

このご時世ならではのやさしさを親子で味わうことになった。それ以来、母も誰かのためにと予備のマスクも忘れずに持ち歩いているようだ。

それにしても15分間一緒に母と駅まで歩いたのに、その間マスクをしていない母に気付かない私のまぬけさにびっくりする。

そう、私はちゃっかりマスクをしているのにだ。