SNS(会員制交流サイト)などを通じ、個人間で金を貸し借りする「個人間融資」をめぐるトラブルが増えている。「融資」というものの実態はヤミ金業者であることが多く、大阪では、債務者に苛烈な取り立てをしたヤミ金業者の男が逮捕される事件も。今年に入ってからは、新型コロナウイルス禍による生活苦などを背景に個人間融資を誘う投稿がSNSで相次いでおり、金融庁は「安易に手を出せば取り返しのつかない事態になる」と警鐘を鳴らす。
「金返さんかい!」
4月9日夜、大阪府東大阪市内のアパートで男の怒号が響き渡った。債務者の30代男性が玄関ドア越しに「返せません」と応じると、男はマジックでドアに「金返せ 連絡しないなら またくる」と書いた上で、火のついたマッチを郵便受けに投げ込んだ。煙があがるなど、消防車が出動するボヤ騒ぎとなった。
男は、大阪府警布施署などが10月までに現住建造物放火未遂や貸金業法違反などの疑いで逮捕、送検した大阪市中央区の林東周(リン・トウシュウ)被告(25)=韓国籍、貸金業法違反罪などで起訴。無登録で貸金業を営み、法定を上回る金利を受け取っていたなどの疑いがあるが、悪質な点は法外な金利だけでなく、返済が滞れば債務者に苛烈な取り立てを行っていたことだ。
性行為要求も
被害者は府内の10~40代の男女12人で、学生や会社員など幅広い。1回あたりの融資額は1万~40万円で、10日で30%、1カ月で50%を目安に利息を取っていた。約2年前からSNSでヤミ金を始めたといい、「ヤミ金融業の漫画を読みヒントを得た。SNSなら手軽に始められると思った」と供述。開業資金はわずか10万円程度だった。
手口はこうだ。まずSNSで「橘簾」という偽名を使い、大阪在住者に個人間融資を呼びかけ、ダイレクトメールでやり取りを始める。初めは「その人に合った返済プランを組みます!信頼関係築きましょう」などと親切に接するが、いざ金を貸す段階になると、態度はがらりと急変する。