「ソーシャルディスタンス(社会的距離)」。今年に入ってよく見かけるようになった言葉です。3密(密閉・密集・密接)という用語が使われるようになったせいか、以前ほどには紙面に出て来なくなりましたが…。目にした当初は、なじみのない言葉であると同時に取って付けたような印象があり、しっくりこないものがありました。最初にこの言葉を見たときに「社会的なつながりから距離を置く」ということかと思ったからです。意味するところは「新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために相手と適切な距離を置く」ということであって、社会的に、というよりは物理的に距離を置くという意味ではないでしょうか。ソーシャルを直訳すると「社会的な」ということになりますが、どこかずれているような感じがしてしまいます。
もとが英語ですから致し方ないとはいえ、言葉が長いというのも使いにくい。「Social Distance」の頭文字を取って「SD」というのも考えてみましたが、SDを略語とする言葉が結構あるようでこれも使いにくい。他に適切な表現がないか考えてみました。自動車走行時の車と車との間隔のことを車間距離と言います。それに倣って「人間距離」という言葉を考えてみたのですが、恐らく「にんげん」距離と読まれて「じんかん」距離とは読まれないでしょうからこれではいけません。次に考えたのが「対人距離」。これはいいかな、と思ったものの、実は社会学用語の「パーソナルスペース」の訳語の一つになっていて、これもいけません。何かいい表現がないかとネットでいろいろ当たってみたところ、これはよさそうだというものがありました。それは「対人間隔」。これなら「人と人との距離を適切に保つ」という意味合いが出ているように思うのですがどうでしょうか。もっとも、ここに書くだけでは認知されることも広く使われることもないのですが…。