【モスクワ=小野田雄一】米大統領選で米主要メディアが民主党のバイデン前副大統領の当選確実を報じたことについて、ロシアのプーチン政権は8日未明(日本時間同日朝)の時点で公式なコメントは出していない。ただ、露議会や専門家の間では、バイデン政権となれば米露関係はトランプ大統領時代よりも悪化するとの見方が強い。
米露関係は、ロシアによる2014年のウクライナ南部クリミア半島併合や、16年の米大統領選干渉問題などで極度に悪化した。
トランプ氏はロシアの先進7カ国(G7)復帰を提案したほか、プーチン露大統領への個人的な親近感を語るなど、ロシアに融和的な態度を示してきた。これに対し、バイデン氏はロシアを「米国の重大な脅威」と批判。ロシアと対立するウクライナへの支援拡大なども表明してきた。
バイデン氏当確の報を受け、露上院のコサチョフ国際問題委員長は7日、自身のフェイスブックに「(米国による)政治的な動機に基づく制裁がさらに増えるだろう」と見通しを投稿。「米国最優先」を掲げたトランプ政権よりもバイデン政権は世界の問題への関与を強め、世界各地でのロシアとの勢力争いが激化するとの見方を示した。
ロシアを代表する外交評論家のルキヤノフ氏も同日、イタル・タス通信に、「バイデン政権は旧ソ連圏で(ロシアに)より圧力的な政策に回帰する可能性がある。これにロシアはいらだつだろう」と指摘。「バイデン氏周辺には、16年の大統領選介入で民主党の勝利がロシアに奪われたとの怒りを持つ人が多い」とし、このことも米露関係正常化の妨げになるとした。
一方、ラブロフ露外相はこれに先立ち、露経済紙コメルサント(電子版)が3日掲載したインタビューで、誰が米大統領になったとしても「ロシアは現実的に二国間関係を評価しており、過剰な期待はしていない」と指摘。当面の間、米露の関係改善は期待できないとの考えを示している。