朝晴れエッセー

落ち葉掃き・11月6日

毎朝、道路で落ち葉を掃いていると、返事に困るようなことをいわれるときがある。

「はっぱ、はかないほうがいいんじゃない?」。去年、黄色い帽子をかぶっていたから、この男の子は小学2年生。ほうきを杖(つえ)にして考える。「どうして?」

「ダンゴムシが食べるのがなくなる」。大人の理屈をいってみるけれど、納得しない顔でランドセルは去っていく。

この道は中学校と自動車教習所との間の道で、両側から8本の桜がさしかかり、花の頃には「桜のトンネル」といって近所の人が愛している。

若い黒柴を散歩させる長身の奥さんがくる。奥さんの名前は知らないが、犬の名前は知っている。だいちゃんは、いつものように耳のうしろをかいてもらおうと飛びついてくる。

だいちゃんのほんとうの名は大豆くんだ。小学校に入ったばかりのお嬢さんがつけたのかと思ったがハズレで、夫婦でつけたのだそうだ。ころころした幼犬がきた日、カレンダーを見ると「納豆の日」と書いてあった。

桜の紅葉は、太陽に向かう側は真っ赤に染まり、裏葉は明るい黄色になる。白っぽいピンク一色に染まる春とちがって、秋は印象派の画家のパレットのような美しさがある。

なぜか下に落ちるとき、伏せた形に落ちる葉がほとんどで、ほうきで掃かなければ美しい赤を見ることができない。

犬を連れた奥さんにこのことを話してみたい気がするけれど、いえない。しかたなく同僚にいってみたら、むさ苦しいその男は「美は、あからさまじゃないんですよ。ええ」と、ガラガラ声でいいやがった。

佐藤雄一 75 東京都三鷹市