直球&曲球

ストレス…友に話して不安を「離す」 中江有里

先月のこと。基本的に寝つきがいいはずが、突然不眠に陥った。食欲が失(う)せて、気分が晴れない。体は至って元気なのに。

外山滋比古氏の本『忘却の力』に書いてあったが、心の疲れは後から出るらしい。

春の緊急事態宣言下で2カ月以上会えなくなっていた母がこの夏亡くなった。通夜、葬儀と慌ただしく日々は過ぎた。こんなにやることがあるのかと思ったが、時間に追われている間は何も考えないで済む。仕事も通常通り進めながら納骨法要が終わった時、正直ホッとした。これで一段落だと思ったら、心の方の疲れがあらわれたようだ。

人前では何ともない。だけど一人になると言いようのない辛(つら)さに襲われた。

そこで友人に連絡しては話を聞いてもらった。迷惑だろうとわかっていたが、皆耳を傾けてくれた。吐き出すように話すとその時だけ心が軽くなった。

一人の友人に言われた。「辛いという自覚があるんだから、きっと大丈夫」

自分の状態をすぐに言語化するのは仕事柄かもしれないが、よくわからない不安をそのまま口に出して発散する。「話す」ことは「離す」ことだと聞いたことがある。

心が疲れているのは、私だけではないだろう。

たとえば芸能界での自死のニュースが流れると、ショックを受ける人がいる。私自身それらのニュースが辛くて、しばらく触れないようにしていた。

情報は生きる上で必要なものもあるが、必要な情報は選んで取り入れていけばいいのであって、情報の波にのみ込まれては元も子もない。

ストレスは誰でも持っている。生きている限りストレスにまみれる。なくすことはできないのだから自覚をもって付き合っていくしかない。

そして自分だけでなく、他人のストレスも目には見えない。最初に不調やその原因に気付くのは自分だけど、一人では解決できないから厄介だ。

今回ほど友人たちがいてくれてありがたかったことはない。向こうがどう思っているかはわからないが、もし逆の立場になったら、私も話を聞こうと思う。

【プロフィル】中江有里(なかえ・ゆり)

女優・脚本家・作家。昭和48年、大阪府出身。平成元年、芸能界デビュー、多くのテレビドラマ、映画に出演。14年、「納豆ウドン」で「BKラジオドラマ脚本懸賞」最高賞を受賞し、脚本家デビュー。フジテレビ「とくダネ!」に出演中。文化審議会委員。